新型コロナウイルス

小児のCOVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の情報(3月15日版)

今回は、新型コロナウイルスに感染した妊婦から産まれた10例の新生児の症例集積を紹介させていただきます。

ポイント

  •  新型コロナウイルスに感染した妊婦から出生した10例の新生児の症例
  •  垂直感染はなさそう
  •  9名は状態は安定している。1名は死亡
  •  死因の詳細は不明で、新型コロナウイルス感染が原因かははっきりと分からない
マミー
マミー
妊婦が新型コロナウイルスに感染するとどうなりますか?

Dr.KID
Dr.KID
一般的には、特別悪化することはないようですが、まだわかっていないことも多いです。

感染者の推移 (3/14):

  •  世界:140,201人
  •  中国:80,824人
  •  日本:722人
  •  韓国:8086人
  •  イタリア:17,660人
  •  イラン:11,364人

イタリアとイランがすごい勢いで増えていいます。気づけば、ヨーロッパの国々も増加傾向にあります。ドイツ・フランスが3000-4000名前後に増加しています。 
アメリカも患者数が徐々に増えてきています。

  新型コロナウイルスが検出されるも無症状だった小児

新しい新生児の症例報告を発見したので、簡単にまとめようと思います。

 概要

今回は、新型コロナウイルスに感染した妊婦9名から出生した新生児10名(男8; 女2)の症例集積です。1/20〜2/5の間に生まれたようです。

妊婦の症状

妊婦の症状のタイミングですが、以下の通りでした。

  N = 9  
分娩前 4 Oseltamivirで治療, 3
分娩日 2  
分娩後 3 抗ウイルス薬, 0

分娩の方法

  N = 9
帝王切開 7
経膣分娩 2

そのほかのまとめの表も掲載されていました:


(原著より拝借)

 

新生児の特徴

新生児の特徴は、以下の通りでした:

咽頭スワブのPCRを確認していますが、新生児は全て陰性だったようです。


(論文より拝借)

垂直感染はこれまでの過去の報告をみてもありませんでした。

一方で、出生後に1名死亡している点です。著者らの記載を確認してみました。

Among them, one patient was delivered at a gestational age of 34+5 weeks and was admitted 30 minutes after delivery due to shortness of breath and moaning. Eight days later, he developed refractory shock, multiple organ failure, and disseminated intravascular coagulation (DIC), which were treated by the transfusion of platelets, suspended red blood cells, and plasma; he died on the 9th day.

簡単に意訳させていただくと、「34週5日で出生した新生児は、分娩30分後に呼吸苦を認めています。8日後に、呼吸不全、ショック、多臓器不全、DICを起こし、血小板・赤血球・血漿を投与して治療したものの、9日目に亡くなりました」と記載されています。

著者らの理由は以下の通り記載していました。

One of them died, which might be due to poor awareness of the disease, poor immune function of the neonate, and quick disease progression; massive replication of virus in many tissues leads to major viremia, leading to refractory shock, multiple organ failure, and DIC, which cannot be corrected by blood transfusions and symptomatic supportive treatments.

死因については、新生児の免疫能が低かった、疾患が急速に進行した、ウイルスが大量に複製され多臓器に広がった、などが記載されています。

Dr.KID
Dr.KID
このように述べているのですが、血液や臓器からのPCR検査はそもそもしておらず、あくまで推測でしょう。ウイルスが本当に悪さをしたのか、別に何かしらの問題があったのかは、この情報だけでは判断は難しいように思いました。

他の類似の研究では、羊水、臍帯血、便、胃液などからもPCRを行なっており、この論文の情報ですと片手落ち感があります。

 感想と考察

現時点では妊婦から新生児への垂直感染の報告はなさそうです。しかし、分娩前に感染した場合、新生児に何かしらの悪影響を及ぼす可能性があります。ただ、新型コロナウイルスが原因なのか、感染症によるストレスが原因なのか、まだデータは不足している印象です。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が騒動になって1ヶ月以上になりますが、小児に関しては、徐々に情報が増えてきた印象です。現時点で分かっていることをまとめると、以下の通りです:

Dr.KID
Dr.KID
これまでに私が検索した報告例のまとめです。

まとめ

今回は、

  •  中国と日本の感染者数の推移
  •  10例の新生児の症例集積研究

についてアップデートさせていただきました。

引き続き、新しい情報、過去の文献を読み込んだら、報告させてもらおうと思います。

新刊(医学書)発売決定!

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

noteもやってます

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。