Cancer Epidemiology (がんの疫学)

Cancer Epidemiology (がんの疫学)(18)| 肥満と発がんについて

前回までは、タバコとがんについて3回にわたり解説してきました。

Cancer Epidemiology (がんの疫学)(17)| 受動喫煙と発がんについて前回はタバコの消費量の世界的なトレンドについて簡単に解説してきました。 これまでの解説は主に喫煙者の発がんについて説明してきましたが、...

今回は、少しトピックを変えて、疫学的な視点から肥満とがんについて考えていきましょう。

一般に、American Cancer Societyによると、がんの40%ほどは予防可能と考えられています。40%の内訳ですが、

  •  喫煙:19%
  •  肥満: 7.8%
  •  アルコール:5.6%
  •  紫外線:4.7%
  •  運動不足:2.9%
  •  食事:1.9%

などが該当します。

今回は、この2番目に大きな要因である肥満について、疫学的な視点からがんとの絡みを解説していけたらと思います。

世界の肥満人口について

1975年から、世界の肥満人口は急激に増加しています。かつては貧困とそれに伴う羸痩(やせ過ぎ)が問題視されていましたが、現代では肥満による死亡者の方が多くなっています。
例えば、世界人口のうち65%は、過体重・肥満によって死亡する人数の方が、やせで死亡する人数より多い地域に居住しています。

2016年のデータになりますが、過体重・肥満の成人人口は、

  •  過体重:19億人
  •  肥満:6.5億人

と推定されています。小児に関してですが、過体重 or 肥満の人口は

  •  5歳未満:4100万人
  •  5歳以上:3.4億人

と言われています。

小児の肥満は現代では、非常に重要な公衆衛生上の問題となっています。将来の健康に悪影響を起こすからで、例えば、糖尿病のリスクが上昇する、心血管系の疾患にかかりやすくなる、などと言われています。

肥満の危険因子について

個々の詳しい解説は省略させていただきますが、肥満の危険因子は大きく分けて7つあります:

  •  エネルギーバランス
  •  遺伝的な背景
  •  代謝の違い
  •  行動
  •  環境
  •  文化
  •  社会経済的状況

肥満と聞くと、エネルギーのインとアウトの問題と捉えがちです。確かにそうなのかもしれませんが、それ以外の要素も数多くあります。

肥満の計測

肥満の指標として有名なのはBMIがありますが、それ以外にもいくつかあります。例えば、

  •  Skinfold thickness
  •  Bioelectrical impedance
  •  Body fat scale
  •  Waist-Hip-Ratio

などが代表的でしょう。BMIは筋肉量や脂肪の分布を考慮できないのと、人種によるばらつきの違いを考慮できない点が挙げられます。

BMIとがんについて

最後に、BMIの増加とがんのリスクについて説明しましょう。有名な論文ですが、2008年にRenehanらが報告したものがあります。

男性編

まずは男性の図はこちらになります:

こちらはBMIが5増加すると、がんの相対リスクがどのくらい上昇するかを見ています。

よく肥満に関連すると言われている食道癌、大腸がん、腎癌などが上昇しているのが分かります。

女性編

女性はどうでしょうか。

男性と似たようなリスク比の分布になっていますが、女性特有のものもありそうです。

例えば肥満と子宮内膜癌、閉経後の乳がんなどは数多くの研究がされているのが分かります。

Bhaskaranらから報告された、イギリス524万人のデータをもとにしたdose-response relationshipもあります。

Spline modelという統計モデルを使用して、BMIによってそれぞれのがんのリスクがどの程度変化するかを見た研究です。

まとめ

今回は肥満・過体重とがんについて、簡単に説明してきました。次回は感染症とがんについて触れていければと思います。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。