今回は「choosing wisely」の小児科版について、おさらいしてみようと思います。
- Choosing wiselyの紹介:小児科版
アメリカ小児科学会からのChoosing Wisely Campaignから
[Choosing Wisely] 小児に関わる医師と患者が知っておくべき10のこと
1. 抗生物質はウイルス性呼吸器疾患(副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎、気管支炎)には使用しない
抗生物質は、細菌性副鼻腔炎またはA群溶連菌性咽頭炎の基準を満たさない限り、鼻詰まり、咳、咽頭痛を特徴とする上気道疾患には使用してはならない。
これらの感染症の大部分はウイルスによって引き起こされる。
呼吸器感染症は小児に対する抗生物質処方の大部分を占めており、小児の呼吸器感染症に対する抗生物質処方の50%は不要であると推定されています。
ウイルス性呼吸器疾患に対する抗生物質の使用は、医療費の増加や有害事象の増加につながるだけでなく、薬剤耐性菌の増加につながる可能性があります。
2. 咳止めや風邪薬は、幼児の呼吸器疾患に処方したり、推奨したり、使用したりしない
過去の研究によると、咳止めや風邪薬は乳幼児にはほとんど効果がなく、重篤な副作用を引き起こす可能性がある、とわかっています。
子供用の咳・風邪薬の多くは、複数の成分が含まれており、他の製品と組み合わせた場合、誤って過剰摂取してしまう可能性もあります。
3. 軽症の頭部外傷における即時評価にはCTは必要ないが、画像診断が必要かどうかはPECARNの基準を用いて判断する
*PECARNは「Pediatric Emergency Care Applied Research Network」のことを言います。
軽症の頭部外傷は小児や青年で多く見られます。
頭部外傷で病院の救急部を受診した小児の約50%がCTスキャンを受けており、その多くは不要であるかもしれない、というデータがあるようです。
子どもの脳組織は電離放射線に対してより感受性が高いため、X線の不必要な照射は、生涯にわたる発がんのリスクを高めるなど、子どもに大きな危険をもたらします。
不必要なCTスキャンは、医療システムに不要な医療費を課すことのもなります。
このため、軽度の頭部外傷を有する小児においてCT検査をするか否か判断する前に、臨床的に観察を行い適応を決定することは、効果的なアプローチです。
4. 単純熱性けいれんの小児では、画像検査(CT、MRI)は必要ではない
頭部CT、脳MRIなどの画像診断は、検査によるリスクがあるものの、単純性熱性けいれんの診断や治療には役立ちません。
また、MRIは鎮静が必要で、鎮静薬を使用することのリスク、さらに検査を行うコストが伴います。
また、上述の通り、頭部CTは、がんのリスクをわずかに増加させる可能性が示唆された研究があります。
5. CT検査は、腹痛の日常的な評価では必須ではない
腹痛を伴う小児の救急科評価において、CT撮影は頻繁に行われており、一貫性がなく、時に過剰に使用されることもあります。
CTを実施するには放射線が必要であるが、必要な放射線や長期的な癌の発生の可能性に対する誤解や議論もあるようです。
また、小児のCTでは、低用量の放射線を可能にする独自のアプローチがあるようです。しかし、不適切な環境でCTを実施すると、本来は不要な放射線量を小児が浴びる可能性もあります。
CTは小児の腹痛診療には非常に有用です。しかし、必要な時に行われるべき正しい検査で、正しい方法で行われた場合にのみ有効です。
6. 早産児における気管支肺異形成の予防または治療に、高用量デキサメタゾン(0.5mg/kg/日)を処方しない
高用量デキサメタゾン(0.5mg/kg/日)は、低用量と比較しても追加でのメリットはなさそうで、推奨されない。
高用量デキサメタゾンは、神経発達を含む多数の短期および長期の有害なアウトカムと関連性が指摘されています。
7. 病歴を考慮せずに食物アレルギーのスクリーニングパネルを行わない
病歴を考慮せずに様々な食物アレルゲンを検査するスクリーニングパネル(IgE検査)を取り寄せてはいけないでしょう。
臨床的なアレルギー症状を伴わない「感作(検査が陽性であるが症状は出ない)」という結果が出る可能性があります。
例えば、人口の約8%がピーナッツに対して陽性反応を示すが、真にアレルギーがあり、摂取時に症状を示すのは約1%と推定されています。
症状が食物アレルギーを示唆する場合は、慎重な病歴に基づいて検査を選択すべきと考えられています。
8. 生理的胃食道逆流症(GER)で、苦痛がなく、成長にも影響がない場合は、メトクロプラミドや制酸薬の使用は避ける
いわゆる “Happy Splitter(哺乳後に嘔吐をするものの、本人はケロッとして元気) “の小児には、薬は使用しないようにしましょう。
疾患が胃食道逆流(GER)の原因であると示唆されたエビデンスはほとんどありません。
メトクロプラミド(プリンペラン®︎)や制酸薬は生理的GERには効果がないというエビデンスが蓄積されているようです。
乳児期のGERの長期的な後遺症はまれであり、制酸薬がこれらの後遺症を軽減するというエビデンスはほとんどない。
上部消化管(GI)のX線画像診断を診断のために日常的に行うべきではないでしょう。
乳児の胃食道逆流(GER)は正常であり、衣服や寝具が汚れてしまう以外には、大きな健康上の問題とは基本的に関係がない、と保護者に説明するのがよいでしょう。
しかし、成長不良や呼吸器症状に関連したGERはさらなる評価が必要です。
9. 無症候性細菌尿症のスクリーニングや治療にサーベイランスとして培養を使用することは避ける
サーベイランスを目的とした尿培養や無症候性細菌尿症の治療が有益であるという根拠はありません。
サーベイランスを目的とした培養には費用がかかるうえ、偽陽性と偽陰性の両方の結果が得られ、時に臨床医や患者を混乱させます。
無症候性細菌排尿の治療は有害である可能性があり、さらに抗生物質への曝露機会を増加させ、耐性菌への感染の危険因子となりえます。
また、地域社会での抗生物質の全体的な使用につながったり、不必要な画像検査につながる可能性があります。
10. 乳児の家庭用の無呼吸モニターは、乳児突然死症候群(SIDS)を予防するためにルーチンで使用すべきではない
乳児家庭用無呼吸モニターの使用がSIDSの発生率を低下させるという科学的な根拠はなく、この目的のために日常的に使用すべきではない。
しかしながら、退院後に無呼吸や心血管イベントのリスクがある特定の乳児には価値があるかもしれない(例外があることも知っておくべき)。
考察と感想
改めて読んでみると、当たり前のことばかりなのですが、過剰な医療を避け、賢く治療を選択するというのは重要ですね。
検査などは行うメリットに目が行きがちですが、デメリットがある点、検査そのものも不確実性があることは知っておいても良いでしょうね。
まとめ
今回は、choosing wiselyの小児科版を少し紹介してみました。
これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。
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