賢明な医療の選択

小児の胸痛において、疑わしい病歴や心電図の異常がない場合は、ルーチンに心エコー検査をしない[Choosing wisely]

今回は、小児の胸痛の精査としての心エコーに関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
小児の胸痛の精査としての心エコーに関して、教えてください

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:小児の胸痛の精査としての心エコー
  •  ルーチンでは行わない

American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely

小児の胸痛において、気になる病歴や心電図の異常がない場合は、ルーチンに心エコー検査を指示しない[Choosing wisely]

Do not order an echocardiogram for the routine evaluation of pediatric chest pain in the absence of a concerning history or ECG abnormalities.

Chest pain is a common presenting symptom in pediatrics but is rarely life-threatening, and the vast majority of cases are not cardiac in origin. Therefore, the addition of an echocardiogram only adds diagnostic value in very limited circumstances and increases the cost of care. If the patient has a concerning personal (exertional chest pain with an abnormal ECG) or family history of sudden or unexplained death or cardiomyopathy or ECG abnormalities, consultation with a pediatric cardiologist is generally recommended prior to obtaining an echocardiogram. Therefore, it is important to obtain a complete personal and family history,* physical examination, and screening ECG, if the treating physician feels that the chest pain is cardiac in nature, prior to proceeding with cardiac consultation and echocardiography.

小児の胸痛において、気になる病歴や心電図の異常がない場合は、ルーチンに心エコー検査を指示しない。

胸痛は小児科でよく見られる症状であるが、生命を脅かすことはほとんどなく、大半の症例は心臓に起因するものではないとされている。

したがって、心エコー図を追加しても、非常に限られた状況でしか診断効果が得られず、治療費も高くなってしまう。

患者に気になる個人歴(心電図異常を伴う労作性胸痛)や家族歴(突然死や原因不明の死亡、心筋症、心電図異常)がある場合は、一般的に心エコー図を撮る前に、小児心臓専門医に相談することが推奨されます。

したがって、心臓専門医への相談や心エコー検査を行う前に、医師が胸痛の原因が心臓にあると判断した場合には、個人情報や家族歴*、身体検査、スクリーニング心電図を十分に行うことが重要です。

考察と感想

小児の胸痛の精査としての心エコーに関してでした。

疑わしい病歴がなければ検査しないと言うのは、その通りと思います。ただ、アメリカのように小児の心臓を専門とした医師へのアクセスは必ずしも良くはない点は考慮が必要かと思いました。

参考文献も読んでみようと思います:

Campbell RM, Douglas PS, Eidem BW, Lai WW, Lopez L, Sachdeva R. ACC/AAP/AHA/ASE/HRS/SCAI/SCCT/SCMR/SOPE 2014 Appropriate use criteria for initial transthoracic echocardiography in outpatient pediatric cardiology: a report of the American College of Cardiology Appropriate Use Criteria Task Force, American Academy of Pediatrics, American Heart Association, American Society of Echocardiography, Heart Rhythm Society, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Cardiovascular Computed Tomography, Society for Cardiovascular Magnetic Resonance, and Society of Pediatric Echocardiography. J Am Coll Cardiol. 2014;64(19):2039-2060

Friedman KG, Kane DA, Rathod RH, et al. Management of pediatric chest pain using a standardized assessment and management plan. Pediatrics. 2011;128(2):239-245
Chamberlain RC, Pelletier JH, Blanchard S, Hornik CP, Hill KD, Campbell MJ. Evaluating appropriate use of pediatric echocardiograms for chest pain in outpatient clinics. J Am Soc Echocardiogr. 2017;30(7):708-713

Nguyen T, Fundora MP, Welch E, et al. Application of the pediatric appropriate use criteria for chest pain. J Pediatr. 2017;185:124-128

まとめ

今回は、小児の胸痛の精査としての心エコーに関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

created by Rinker
¥6,600
(2024/10/12 20:59:02時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/10/12 23:26:47時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。