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インフルエンザワクチンは乳幼児に有効か?[ドイツ&フィンランド編:RCT]

「インフルエンザワクチンは乳幼児には効かないから意味がない」は誇張ですが、ワクチン接種をしても抗体産生しなかったり、有効性が不十分になってしまうのは事実だと思います。乳幼児に関しては、良くても60%くらいの有効性ではないでしょうか。

このため、経鼻で行えるインフルエンザワクチンも開発されましたが、その有効性は2-7歳の小児であれば70-95%と高い値でしたが、2歳未満の場合、入院のリスクが上昇した研究結果もあります。

2歳未満にインフルエンザワクチンを投与して、しっかりと抗体産生を促すための方法の1つとしてadjuvant (アジュバント)を添加させる方法があります。インフルエンザに関しては、MF59というアジュヴァントをワクチンに配合させて、その有効性を検討された研究がありますので、今回はこちらを紹介しようと思います。

MF59というアジュバントは、この論文が発表された現在、 27の国で使用されているようです。

ポイント

インフルエンザワクチンは…

  •  近年は乳幼児への有効性を改善させるためアジュバントを使用されることも
  •  アジュバントを使用することで有効性は大きく改善している印象
  •  現在、カナダ、ヨーロッパ、南米の一部の国で使用されている
マミー
マミー
アジュバントって何ですか?

Dr.KID
Dr.KID
アジュバントは、ラテン語で「助ける」という意味があります。ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質のことを指します。

研究の方法

今回の研究は- 2007-09年にかけて、ドイツとフィンランドで行われたRCTです。

対象となったのは、

  •   これまでにインフルエンザワクチンを受けたことがない
  •   基礎疾患がない

小児が該当しています。

 ワクチンについて

ワクチンは、

  •  アジュバントありの3価インフルエンザワクチン(ATIV)
  •  アジュバントなしの3価インフルエンザワクチン(TIV)
  •  コントロール:髄膜炎菌ワクチン

のいずれかをランダムに投与しています。

アウトカムについて

アウトカムに関しては、

  •   インフルエンザ感染のリスク

を見ています。

ワクチンの有効性(VE, vaccive efficacy)は

  •  VE = (1 – RR) x 100%

で計算されています。

Dr.KID
Dr.KID

研究結果と考察

様々な年齢区分で分けられていますが、6〜24ヶ月の結果にフォーカスして解説しましょう。

全てのインフルエンザへの予防効果

ワクチン インフル
感染
VE 95%CI
ATIV 5/820 77% 37 to 92
TIV 18/706 11% -89 to 58
Control 11/401 Ref  

ワクチンの有効性に関しては、アジュバントありのインフルエンザワクチン(ATIV)の方が明らかに大きいです。

一方で、アジュバントなしの場合、有効性は11%と非常に低い値です。

  ワクチン株に対する予防効果

次に、ワクチン株にフォーカスしてデータを見てみましょう。

ワクチン インフル
感染
VE 95%CI
ATIV 4/820 75% 20 to 92
TIV 15/706 2% -129 to 58
Control 8/401 Ref  

ワクチン株への感染リスクをアウトカムにすると、上の表のような結果でした。アジュバントありの場合、75%と非常に良好な結果でしたが、ない場合は2%と非常に低い値です。

 感想と考察

今回の研究では、インフルエンザワクチンにMF59というアジュバントを使用した場合に有効性が改善するか検討しています。結果として、有効性は大きく上昇しているのが分かります。

抗体価の上昇も確認していますが、35ヶ月以下の小児に関してはアジュバントを有していた方が抗体価が明らかに上昇しています。一方で、35ヶ月以降であれば、それほど大きな違いななさそうな印象です。

この研究の問題点ですが、コントロールのインフルエンザ感染率が以上に低い点です。過去の研究を見ても、コントロールの感染率は10%前後のものもありますが、この研究ではわずかに2%です。このため、有効性の検証はやや不安定な結果となります。

MF59というアジュバントが、世界的にどのくらい使用されているのか、私には詳しくは分かりません。少し調べてみたところカナダ、ヨーロッパ、南米の一部の国ではすでに季節性インフルエンザワクチン(小児)に認可されているようです [参考]. AS03も同様のようです。

Dr.KID
Dr.KID
成人のインフルワクチンで認可している国もあるようですね。

まとめ

インフルエンザワクチンにMF59というアジュバントを使用した場合に有効性が改善するか検討しています。結果として、有効性は大きく上昇しているのが分かります。

一方で、アジュバントなしの3価インフルエンザワクチンは、生後2歳未満ではかなり低い値でした。しかし、今回の研究はインフルエンザ感染者の割合があまりに少なく、課題を残す研究結果となってしまっています。

マミー
マミー
インフルエンザ感染者の割合が低すぎると何か問題でも?

Dr.KID
Dr.KID
あまりに少ないと、わずかな感染者数が全体に大きく影響してしまうため、有効性の評価がかなり不安定になってしまいます。

まとめ

2歳未満のインフルエンザワクチンについて…

  •  アジュバント(MF59)を使用すると有効性が改善するかもしれない
  •  有名誌の結果ではあるが、感染率があまりに低く、結果はかなり不安定

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。