小児科

小児の急性ITPにIVIGは有効なのか?[アメリカ編]

ITP(免疫性血小板減少症)の治療の選択肢の1つに、免疫グロブリン大量療法があります。

今回は、このエビデンスの礎となる症例集積の1つについて解説していこうと思います。

ポイント

  •  1985年アメリカとスイスからの報告
  •  急性ITPの小児29例
  •  IVIGを投与したところ、血小板は急速に回復したことを認めた
マミー
マミー
ITPの治療って、どうされているのですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

背景・目的

急性特発性血小板減少性紫斑病(急性ITP)の小児29例 (未治療15例、ステロイド抵抗性10例、ステロイド依存性4例) にガンマグロブリン1 g/kg/日を静注した:

  • 24時間の平均血小板増加は>5万/μl
  • 平均ピーク血小板数は194,000/μl

であった。

25人中18人は単回投与のみを必要とした。
この18人中10人は追加の (維持) 治療を必要としなかった。

未治療患者とステロイド抵抗性患者の転帰は同一であった。しかし、未治療患者ではガンマグロブリン総量が1.8 g/kgが必要であったのに対し、ステロイド抵抗性の患者では3.9 g/kgが必要であった。

29人の患者のうち、6週間間隔で維持療法を必要とするステロイド依存性の小児は1人のみである。

副作用は軽微であった。患者を入院させないことと、5回ではなく1回の来院で治療を行うことによって費用を最小限に抑えた。

考察と感想

今回もクラシックな論文ですが、この症例集積はITPにおいて免疫グロブリンが使用される契機になったものの1つでしょう。

1981年の論文との変化は、治療レジメでしょうか。今回は 1g /kgを単回投与としていますね。出来るだけ外来治療で、というのは、アメリカらしい発想のような気がします。

Dr.KID
Dr.KID
医療コストが高いですからねえ…

まとめ

今回はアメリカからのITP29例の症例集積研究でした。

急性ITPにIVIGが使用されるようになった契機となった論文の1つでした。今回の論文は1日投与での治療レジメで、その効果・反応性を見ています。

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。