新型コロナウイルス

小児や教員における新型コロナウイルスの重症化率は?[スウェーデン編]

新型コロナウイルスに関して、小児は感染者数が少ない、重症化が起こりづらいというのは、感染症が流行してしばらくしてから聞かれるようになりました。

また、学校閉鎖の有無の是非を議論する際に、教員の安全という考えもあると思います。例えば、学校閉鎖をしなかったとして、学校で新型コロナのクラスターが生じて、小児は大丈夫でも、教員が重症化してしまう可能性もあります。

今回はその点を検討したスウェーデンからの報告を紹介します。

マミー
マミー
新型コロナは小児で重症化しにくいって聞いたのですが、学校の先生方は大丈夫でしょうか?

ユーキ先生
ユーキ先生
最近公表された研究があったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

 

ポイント

    • スウェーデンで国規模で行われた研究
  •  2020年3〜6月における1〜16歳の小児の新型コロナウイルスの重症化率は13万人に1人
  • 教員においても重症化率は同世代の他の職業の方と比較しても、少なくとも高くはなかった

   2021年1月に公表されたようです

小児や教員における新型コロナウイルスの重症化率は?[スウェーデン編]

研究の背景/目的

2020年3月中旬、多くの国が新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の拡大を食い止めるため、学校を閉鎖することを決めた。

一方で、スウェーデンは、幼稚園(1~6歳)と学校(7歳〜16歳)を開校し続けることを決めた数少ない国の一つだった。

ここでは, 1歳から16歳までの子供とその教師のCOVID-19に関するスウェーデンのデータを示す。

スウェーデンでは、新型コロナウイルスが2020年春から流行し、社会的距離を置くことが奨励されたが、フェイスマスクを着用することは奨励されなかった。

研究の方法

重症の新型コロナウイルス感染症は、集中治療室 (ICU) 入室により定義された。このデータを、スウェーデン全国の集中治療登録に前向きに記録した。

著者らは, 2020年3月1日から6月30日において、検査室で確認または臨床的に確認された新型コロナウイルス感染症によりICUに入院した全ての小児を追跡した(学校は6月10日頃に終了)。

この症例には、Swedish Pediatric Rheumatology Quality Registerにより定義された多系統炎症性症候群(MIS-C) のために入院した患者を含めた。

Dr.KID
Dr.KID
今は2021年1月ですから、半年以上前のデータになるようですね。

研究の結果

ICUの入室率や死亡者数

小児1,951,905名を対象とし、新型コロナウイルス流行前後の4ヶ月間は以下の通りであった:

  2019/11-2020/02 2020/03-06
期間 4ヶ月 4ヶ月
死亡者数 65 69
新型コロナ 0 15
新型コロナ
ICU入室率
0.77/10万
Dr.KID
Dr.KID
新型コロナに感染してICUに入室する率は非常に低いですね。また、新型コロナによる小児の死亡例はいなかったようです

年齢別に人口あたりのICU入室率を見ると

  •  1〜6歳:0.54/10万人
  •  7〜16歳:0.90/10万人

という推定値でした。

また、ICUに入室した小児15名のうち、慢性疾患のあった小児は4名で、悪性腫瘍2名。慢性腎臓病1名、血液疾患1名、という内訳だったようです。

教員でのデータ

  幼稚園/保育園 学校
N 103,596
ICU入室数 <10名 < 20名
入室率 <19/10万人
入室率の比
(他の職業との比較)
1.10
(0.49〜2.49)
0.43
(0.28〜0.68)

新型コロナウイルス感染のため集中治療室に入室した教員ですが、就学前では10名未満、小学校以降の教員では20名未満であったようです。

この入室率を他の職業(年齢などは調整)と比較しても、幼稚園・保育園の教員はほとんど変わらず、学校の教員は半分ほど低い傾向にありました。

Dr.KID
Dr.KID
データが少し曖昧なのは、個人データを保護するためかと思いました。

結論

本研究にはいくつかの限界があった。著者らは学童からのCOVID-19の家庭内伝播に関するデータを欠いており,著者らの結果の95%信頼区間は広く不正確な推定である。

スウェーデンは学校と幼稚園を開放し続けているにもかかわらず, 新型コロナウイルスの世界的流行の間,学童と就学前の子供のおいて重症COVID-19の発生率は低いことを見出した。

1歳から16歳までの195万人の子供の中で, 15人の子供はCOVID-19, MIS‐Cまたは両方の状態でICUに入室した。この率は、13万人に1人と言える。

考察と感想

「興味深いデータだなー」と思って読んでいたら、すでにNS先生がツイートされていました。さすが、いつも早いですね:

小児は重症化しづらいのは既報通りですし、学校閉鎖をしなかった場合「学校内でのクラスター⇨教員が感染・重症化」という懸念もありますが、半年前のデータの時点では、教員は新型コロナ感染による重症化率は同世代の方々と比較して、少なくとも高くはなかったようです。

Dr.KID
Dr.KID
重症化率が低いのは確かですが、感染対策を怠って良いわけではありません。

他国のデータも気になるところですね。

まとめ

スウェーデンで国規模で行われた研究で、2020年3〜6月における1〜16歳の小児の新型コロナウイルスの重症化率は13万人に1人という推定だったようです。

また、教員においても重症化率は同世代の他の職業の方と比較しても、少なくとも高くはなかったようです。

 

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Dr.KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。