抗菌薬

マイコプラズマ肺炎・気管支炎にマクロライドは有効か?

マイコプラズマ感染症は512歳の学童に多く、主に上気道炎・咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こします。軽症であれば抗菌薬は必ずしも必要はありませんが、重症化した場合には抗菌薬による治療が必要です。

マイコプラズマ肺炎・気管支炎の詳細は以下の記事に書いてあります:

マイコプラズマ感染症についてマイコプラズマ感染症まとめ マイコプラズマにかかると、風邪、肺炎、気管支炎を起こします 5歳〜12歳の学童でよく起こります ...

日本を含むアジアはマクロライド耐性のマイコプラズマが増えていますが、マイコプラズマ肺炎・気管支炎に対してマクロライドが有効かを検討したシステマティック・レビューとメタ解析が2つあります。

この研究では、小児のマイコプラズマ肺炎・気管支炎に対して、マクロライドvs. 非マクロライド(テトラサイクリンやキノロンは含まない)で有効性を検討しています。

Pediatrics誌に掲載されたシステマティック・レビューとメタ解析

最初に紹介するのは2014年にPediatrics誌に掲載された論文です

参考文献

Biondi E, McCulloh R, Alverson B, Klein A, Dixon A, Ralston S. Treatment of Mycoplasma Pneumonia: A Systematic Review. Pediatrics. 2014;133(6):1081-1090. doi:10.1542/peds.2013-3729

システマティックレビューで5つのRCTが選ばれメタ解析が行われています。

こちらの結果によると、マクロライドを使用したほうが臨床的な改善のある割合が12%ほど高かったです[RD, 12%; 95%CI, -0.04–0.20; NNT, 8]
著者らも原文に述べていますが、研究間でのばらつきが大きく(異質性(
Heterogeneity)といいます)、さらにRD95%信頼区間も大きいため、不正確な推定です。

例えば、Forest plot(左図)をみてみると、Esposito et al (A)の研究結果のRD0.23と大きいです。一方で、そのほかの4つ結果はおよそRD = 0付近にあります。

 

Funnel plotでも他の研究の推定地値から外れており、出版バイアス(Publication bias)が示唆されています。

マクロライドが臨床的に有効であった可能性はありますが、この結果だけで断言することは難しいでしょう。
逆説的に考えると、RD=0とされた研究も複数あり、抗菌スペクトラムが外れた抗菌薬やプラセボを使用しても自然軽快しているのがわかります。

また、この研究はアウトカムが「(咳など)臨床的な改善」としていますが、これを計測した日が研究によって大きく異なり、やや強引にメタ解析をしたと思われます。

RD = 0.12は本当か?

[RD, 12%; 95%CI, -0.04–0.20; NNT, 8]

の数字をみて、直感的に少し変だと思いました。RDですが、-0.04と0.20の間ですと、8%あたりが真ん中なのではないでしょうか。12%はやや右側に偏っている印象です。

私のほうでmeta-analysisを著者等と同じ統計モデルを使用して行ってみたのですが、やはりRD = 0.08 (95%CI, -0.04 to 0.20; NNT, 13)となりました。

個々の研究のRDや95%CIは一緒ですし、重み(weight)も同じですが、なぜか最後の点推定とNNTのみ異なる結論に至っています。どのような計算をされたのかが、少し疑問です。

コクランデータベースに掲載された論文について

全く同じテーマでコクランデータベースに報告された論文もあります。

参考文献

Gardiner SJ, Gavranich JB, Chang AB. Antibiotics for community-acquired lower respiratory tract infections secondary to Mycoplasma pneumoniae in children. Cochrane database Syst Rev. 2015;1(1):CD004875. doi:10.1002/14651858.CD004875.pub5

2015年にコクランデータベースからも同じテーマでシステマティックレビューとメタ解析がされています。

こちらのシステマティックレビューでは8つの研究が対象となっていますが、

  1. 一部の小児のみがマイコプラズマ感染と思われ
  2. 抗菌薬の種類・投与量が研究間で異なる
  3. 診断の基準が異なる(血液検査vs. PCR)
  4. 研究に参加した集団の重症度などが異なる、

などといった理由からメタ解析は行われていません。

「この研究からは特異的な結論を導き出すだけの十分なエビデンスがない(つまり研究が不足している)」と論文の著者らは最後に述べています。

考察と感想

システマティックレビューとメタ解析というと、格式高いエビデンスのように感じてしまうのですが、質はきちんと評価したほうがよさそうですね。Pediatrics誌は小児科系でもトップジャーナルであるのは間違いないのですが、単純な計算のミスに気づいていないか、なにか事情でもあったのでしょうか。アウトカムの設定日もバラバラで、通常であればメタ解析を行わないような研究で統合されてしまっています。

一方で、コクランデータベースのほうが、系統的にきちんと評価されている気がします。まあコクランはシステマティックレビューとメタ解析を中心としているので、書く側も、査読する側も慣れているというのもあるのでしょうが。
とはいえ、コクランですらたまにエラーを見つけてしまうことがあります。細かなエラーを雑誌側に逐一報告すべきなのかは、ちょっと迷いどころですね。

Dr.KID
Dr.KID
気難しい研究者と言われてしまいそうですね…

まとめ

今回は小児のマイコプラズマ肺炎・気管支炎とマクロライドを調査したシステマティックレビューとメタ解析の結果を説明しました。

マイコプラズマにマクロライドを使用すると、症状が早く軽快するという研究と、長期的にみるとそうでもないとする相反する結果がでています。

 

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私のブログでも触り程度ですが、解説しています。導入編として読んでいただけると幸いです。

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。