科学的根拠

抗ヒスタミン薬や去痰薬は小児の滲出性中耳炎に対して効果がない?

今回のこちらの研究は1974年にスウェーデンのMolnda病院で行われたランダム化比較試験(RCT)です。

滲出性中耳炎についてはこちらで詳しく解説しています。

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小児の滲出性中耳炎で抗ヒスタミン薬や去痰薬が使用されていることがありますが、実はこれらの薬は1970年代からすでに臨床試験がされています。

研究の方法

今回の研究は、1974年に滲出性中耳炎のためMolnda病院の耳鼻科に受診した小児(主に0〜10歳)を対象に行われました。

まず最初に3週間以内の抗菌薬の投与の有無が3週間以内にあるか確認し、

  1.  プラセボ
  2.  ブロムへキシン(ビソルボン®)
  3.  シナリジン(cinarizin; Rinomar®)
  4.  ブロムへキシン+シナリジン

の4つのグループにランダムに割付ています。
ブロムへキシン(ビソルボン®)は痰の粘稠度を下げる去痰薬の一種です。
シナリジン(cinarizin; Rinomar®)は抗ヒスタミン薬の一種です。

これらの薬を投与開始し、2週間毎に外来受診とし、滲出性中耳炎が改善するまで薬を投与しています(最大7週間)。

研究の結果と考察

228人の患者が対象となり、最終的に研究を終了できたのは178人になります。
50人は再診しなかったため追跡不能、感染症を併発したなどの理由で除外されています。

178人中109人は7週以内に滲出性中耳炎が軽快しました。

全体の治癒率について

結果はこちらになります。


(Tableは原著より拝借)

4つの治療グループでの回復率(cured patients)をみると、58%〜65%と同等の結果でした。

手元の統計ソフトで検定をしても、P-value = 0.938と統計学的な有意差がないのもわかります。

抗菌薬の先行投与がある場合

(Tableは原著より拝借)

左側が先行する抗菌薬投与がある場合、右側がない場合です。

抗菌薬の投与歴がある患者において、ブロムへキシンや抗ヒスタミン薬の治療効果ははっきりとは認めていません。治癒率が66〜78%となっています。

4るのグループで統計学的な有意差がないか検定してみましたが、ありませんでした。

抗菌薬の先行投与がない場合

上のテーブルの右側が抗菌薬の先行投与がない場合をです。
いずれのグループも治癒率が42〜52%と似たような結果になっています。

統計ソフトで検定してみても、有意差は認めていません。

抗菌薬の先行投与について

抗菌薬の先行投与の有無によって、治癒率が異なるようにも見えます。

先行投与 あり なし
治癒率 71% 47%

これを統計学的に評価をすると、以下のようになります。

P = 0.001と統計学的な有意差があります。

抗ヒスタミン薬や去痰薬を投与しても滲出性中耳炎への有効性は認められませんでしたが、先行する抗菌薬があるか否かで結果が変わりそうです。
これは昨日の記事とも一致していますね。

滲出性中耳炎の治療に抗ヒスタミン薬を併用してもメリットなし前回、滲出性中耳炎に第一世代の抗ヒスタミン薬と充血除去剤を使用してもメリットがあまりないばかりか、副作用がかえって生じるリスクが明らかに...

ひょっとしたら、ランダム化をしたのに、なぜ抗菌薬の有無で有意差がでるの?と思われたかもしれません。

上のDAGで説明をすると、ランダム化は治療に入ってくる矢印を削除します。
このため、抗菌薬の先行投与と治療には相関がなくなります。

一方で、ランダム化をしてもアウトカムである治癒との関連には影響しないため、今回のように抗菌薬の先行投与の有無によって(治療内容とは関係なしに)治癒率が異なることがあります。

まとめ

今回の研究では、抗ヒスタミン薬や去痰薬は滲出性中耳炎の治癒に影響しなさそうな結果でした。

一方で抗菌薬の先行投与があるか否かが治癒率に影響していそうですが、こちらは今回の研究テーマではないため、またの機会に妥当性について説明していければと思います。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。