抗菌薬

小児の風邪に対する抗菌薬と合併症の予防率について| システマティックレビューとメタ解析

「かぜが悪化しないよう、念のため抗菌薬が欲しい」と保護者からお願いされることもありますし、「熱が長引いているから念のため」と抗菌薬を処方する医師もいるのかもしれません。5歳以下の小児で抗菌薬が中耳炎や肺炎の予防効果があるのかを検討したシステマティック・レビューとメタ解析の報告があります。

Dr.KID
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「念のため」処方の是非を検討した研究ですね。

参考文献

Alves Galvão MG, Rocha Crispino Santos MA, Alves Da Cunha AJL. Antibiotics for undifferentiated acute respiratory tract infections in children under five years of age. Cochrane Database Syst Rev. 2009;(3). doi:10.1002/14651858.CD007880

この研究では、小児のかぜに抗菌薬を使用すると

  • 中耳炎
  • 肺炎

が予防できるかを検討しています。

Dr.KID
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予防効果があるのかを検討しています。

小児のかぜに抗菌薬を使用すると中耳炎を予防できるか?

まずは抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸)が中耳炎の予防効果があるのか検討したメタ解析の結果をみてみましょう。

プラセボと比較して、抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸)を使用したグループは中耳炎のリスクが0.70倍と低い傾向にありましたが、95%信頼区間は広くやや不正確な推定です6(RR, 0.70; 95%CI, 0.45–1.11)。私のほうで、固定効果モデルを使用してリスク差(RD)とNNTを計算しましたが、[RD -0.05; 95%CI, -0.12–0.02; NNT 20]となります。リスク比でみると0.7倍に減少していますが、リスク差でみると5%ほどの差です。さらにNNT = 20であり、20人治療して1人だけ急性中耳炎の合併症を予防できることになります。

このシステマティック・レビューとメタ解析にもいくつか問題点が指摘されています。問題点をあげると、研究数やサンプル数が少なく、盲検化やランダム化、情報バイアスの対処についての記載が不十分です。このように、研究の質に関する問題点が残っています。

Dr.KID
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予防効果はありそうですが、研究の質に疑問がありますし、小児のNNT 20とはいえ、小児の風邪に抗菌薬を処方し続けるのは効率的でない気がします。

小児のかぜに抗菌薬を使用すると肺炎を予防できるか?

こちらの結果は、急性上気道炎の小児にアモキシシリンを使用して、合併症である肺炎を予防できるかを検討しています。残念ながら対象となった研究は1つのみで、11ヶ月以下、12〜58ヶ月の2つに分かれています。

結果ですが、アモキシシリンの肺炎に対する予防効果が示唆されるような結果はなさそうでした。[RR, 1.05; 95%CI, 0.74–1.49; RD, 0.01; 95%CI, -0.04–0.06; NNT, -100]

以上をまとめると、小児のかぜに抗菌薬を使用しても、急性中耳炎や肺炎を予防できる可能性は低く、科学的な根拠は不十分といわざるを得ません。「かぜが悪化して中耳炎/肺炎にならないように、念のため」と処方してしまうのは望ましくないといえます。

Dr.KID
Dr.KID
小児の肺炎はウイルス性が多いので、予防効果がなさそうなのも納得です。

まとめ

  • 小児のかぜに抗菌薬を使用すると急性中耳炎のリスクがわずかに下がるかもしれませんが、20人に投与して1人予防できるレベルです。研究の質に問題点が指摘されている点も留意しましょう。
  • 過去の研究数は1つですが、小児のかぜへの抗菌薬使用は、肺炎の予防効果はなさそうです。
Dr.KID
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「一応…」「念のため」という処方は避けたいところですね。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。