今回は、乗り物酔いに対して、抗ヒスタミン薬の効果を検討した研究の紹介です。
- シンナリジンまたはインド・ツヅラフジが、プラセボと比較して乗り物酔いの症状を軽減させるか確認したRCT
- シナリジンには症状を軽減する効果はない
- いくつかの副作用が認められた
Lucertini M, Mirante N, Casagrande M, Trivelloni P, Lugli V. The effect of cinnarizine and cocculus indicus on simulator sickness. Physiol Behav. 2007 May 16;91(1):180-90. doi: 10.1016/j.physbeh.2007.02.008. Epub 2007 Mar 2. PMID: 17434541.
2007年にUKから公表されたようです。
抗ヒスタミン薬は乗り物酔いに有効?[イタリア編]
研究の背景/目的
空間識字訓練装置は、シミュレータ酔い(SS)を軽減することを目的とした予防手段の効果を評価するために採用することができる。
Pensacola Simulator Sickness Questionnaire (SSQ)は、空間識字訓練装置にさらされた際に生じる症状を分析するための貴重な手法である。
本研究では,フライトシミュレーター内で地上ベースの標準的な空間識字訓練を受けた被験者のSSQデータを分析し,2種類の薬理学的手法におけるシミュレータ酔い(SS)への予防効果を評価した。
研究の方法
男性ボランティア12名を対象に、空間識字訓練装置で約1時間の訓練を行う前に、
- シナリジン30mg(CIN)
- コキュラス・インディカス6CH(COC)
- プラセボ(PLC)
のいずれかを二重盲検法で投与するという実験計画を立てた。
すべての被験者は、3つの異なる条件(CIN、COC、PLC)で、少なくとも2週間を隔てた3日間で連続して実験を行いました。
各実験日において,すべての被験者はSSQを記入した。さらに、姿勢の不安定さ(静的スタビライザーを使用)と眠気症状の両方が評価された。
研究の結果
すべてのテストは,模擬フライトの前後に,1時間半間隔で異なる時間に実施した。
その結果、フライトシミュレーション後に酔いが強くなり、直線的に減少し、1.30時間後にはシミュレーション前のスコアを示した。
プラセボ(PLC)およびコキュラス・インディカス6CH(COC)とは対照的に、シナリジン30mg(CIN)はフライトシミュレーションの直後に重大な副作用を示し、同時にSSQスコアでも効果が見られなかった。
全体的には、コキュラス・インディカス6CH(COC)とプラセボ(PLC)の間に大きな違いは見られなかったが、コキュラス・インディカス6CH(COC)投与後にわずかに姿勢が不安定になったことが確認された。
結論
今回のシミュレータ環境への曝露に関しては、本研究で投与された薬理学的手段はいずれもSSQで検出されるSS症状の軽減に有効ではなかった。さらに、シナリジン30mg(CIN)はほとんどの被験者で眠気と姿勢の不安定さを有意に増加させた。
考察と感想
シアリジンの成分である「シンナリジン(Cinnarizine)」は
- イオン性カルシウムの内リンパから前庭感覚細胞への移行を阻害し、その機能を抑制する
- 血管拡張作用により、前庭核の血流と代謝能力を改善し、全体的に前庭を抑圧する
といった作用があるようです。
Cinnarizineは、ピペラジンから派生した抗ヒスタミン薬の一種で、H1受容体の競合的でない拮抗薬であり、おそらく鎮静作用もあると思われます。副作用として眠気や集中力の低下を伴うものもあるようです。
意外と使用されている薬で、世界的にはスコポラミンの10倍ほどの需要があるようです。
コキュラス・インディカス(Cocculus Indicus)はインド・ツヅラフジのことで、ホメオパシーなどでい使用され、Cocculus Indicusは、主にMSの症状である吐き気、嘔吐、めまい、後頭部の頭痛などに関与する脳幹に作用すると考えられているようです。
まとめ
シンナリジンまたはインド・ツヅラフジが、プラセボと比較して乗り物酔いの症状を軽減させるか確認したRCTになります。
シナリジンには症状を軽減する効果はなく、いくつかの副作用が認められたようです。
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