乗り物酔い

乗り物いに対して経皮吸収型スコポラミンは有効?

今回は、乗り物いに対して経皮吸収型スコポラミンは有効か、安全かを検証した研究の紹介です。

マミー
マミー
乗り物酔いに有効なお薬はありますか?

ユーキ先生
ユーキ先生
1990年くらいから、さまざまな研究がされていたようです。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • スコポラミンの外用製剤の有効性を検証したRCT
  • 中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効
  • 口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はなかった

参考文献

van Marion WF, Bongaerts MC, Christiaanse JC, Hofkamp HG, van Ouwerkerk W. Influence of transdermal scopolamine on motion sickness during 7 days’ exposure to heavy seas. Clin Pharmacol Ther. 1985 Sep;38(3):301-5. doi: 10.1038/clpt.1985.175. PMID: 4028625.

 1985年に公表されたようです

乗り物いに対して経皮吸収型スコポラミンは有効?

研究の背景/目的

我々は、フリゲート艦において、7日間連続する中・重海域での乗り物酔いの予防において、経皮スコポラミンの有効性と忍容性を評価するために、二重盲検プラセボ対照試験を実施した。

研究の方法

乗り物酔いの既往のある健康な船員49名を、経皮スコポラミン治療システム(TTS-S)または経皮プラセボ(TD-P)投与群に無作為に割り付けた。

パッチは出発の4時間前までに耳の後ろに貼られ、72時間後に剥がされた。
被験者は1日目から4日目、6日目に観察された。

Dr.KID
Dr.KID
船酔いが対象だったようですね。経皮ですが、うまくプラセボを置いていますね。

研究の結果

TTS-S(スコポラミン)群では、最初の2日間で、乗り物酔いの自覚症状と吐き気の発生率がともに減少した。
2日目以降は適応によりTTS-S(スコポラミン)群とTD-P(プラセボ)群の乗り物酔いの兆候、症状の差は消失した。

最初の3日間、TTS-S(スコポラミン)群では嘔吐の発生頻度が少なかった。
6日目,パッチ除去後3日目に,TTS-S(スコポラミン)群では23%に嘔吐がみられたが,TD-P(プラセボ)群では嘔吐はみられなかった.

TTS-S(スコポラミン)群では作業能力が上昇したため、濃度には悪影響がなかった。

結論

中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効であり、口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はないことが示唆された。

考察と感想

ひどく荒れる海での船酔いに対して、スコポラミンは有効で、さらに重大な副作用はなかったようです。

あと、それぞれのグループで、乗り物酔いに対して「慣れ(habituation)」があったのも印象的ですね。

残念な点としては、日本ではスコポラミンの外用製剤はないことですね。

Dr.KID
Dr.KID
多分ですが・・・。

まとめ

スコポラミンの外用製剤の有効性を検証したRCTです。

中程度〜ひどく荒れる海に長時間連続して曝露された場合、スコポラミンは乗り物酔いの予防に有効でした。

また、口腔乾燥は許容できる副作用で、重大な眼球の副作用はないことが示唆された。

 

 

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Dr.KID
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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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