小児のかぜと副鼻腔炎を見分ける方法として、「二層性あるいは二層性の悪化に注意」という考え方があります。
かぜの場合、最初の数日〜1週間までに、症状は徐々に落ち着いてくることが多いですが、副鼻腔炎の場合は、一回よくなったかと思いきや、再度悪化することがよくあります。
今回は、この根拠を示した論文をお伝えできればと思います。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 成人において、CTで副鼻腔炎と診断される予測因子を検討
- 二層性の悪化、膿性鼻汁、鼻腔内の膿性分泌物、ESR > 10が予測因子
- 4つのうち3つ揃うと、感度66%、特異度81%
Lindbaek M, et al. Use of symptoms, signs, and blood tests to diagnose acute sinus infections in primary care: comparison with computed tomography. Fam Med. 1996 Mar;28(3):183-8.
鼻汁が10日以上改善しなかったり、1回よくなっても再度悪化してくる場合は要注意です。
研究の概要
15歳以上が対象者ですが、ノルウェーで行われた横断研究です。
この研究では、臨床的に副鼻腔炎の疑いがあると判断された201名を対象にCTを撮影して、臨床症状・血液検査とCTから判断された副鼻腔炎の有無の関連性を調査しています。
CT上で副鼻腔炎と診断される予測因子として、
a) 二層性に悪化する(”double sickening”)
b) 膿性鼻汁がある
c) 鼻腔内の膿性分泌物
d) 血沈> 10 mm/h
があげられました。この4つのうち3つ以上揃っている場合は、副鼻腔炎の予測因子として感度66%・特異度81%でした。
感想と考察
急性副鼻腔炎のガイドラインも、こういったエビデンスの積み重ねでできているのが解りました。
まとめ
成人がメインになりますが、CTによる画像診断での副鼻腔炎の予測因子を検討した研究でした。臨床的には、二層性に症状が悪化する、膿性鼻汁、鼻腔内に膿性分泌物があるといったコンビが、副鼻腔炎の予測によさそうな印象でした。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/10/14 23:27:23時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について