小児の鼻腔には、肺炎球菌をはじめとした、様々な細菌が定着していることが知られています。今回は、小児のかぜにおいて、細菌がどの程度定着しているかを検討した研究です。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 小児のかぜの患者において、鼻腔から検出される細菌を調査
- 4割ほどで細菌は検出
- 鼻汁の色が黄色・みどり色でも、細菌が検出される割合が高いわけではなさそう
Nasal Middle Meatal Specimen Bacteriology as a Predictor of the Course of Acute Respiratory Infection in Children. Pediatr Infect Dis J. 2006 Feb;25(2):108-12.
一般に、小児の鼻腔の培養と副鼻腔炎の病因微生物には相関がないと考えられています。
研究の概要
今回は、2006年にフィンランドから報告された研究です。
かぜの小児の鼻腔から直接分泌物を採取して培養し、かぜの経過でどのくらい変化しているかをみています。
研究結果
中鼻甲介から分泌物を採取して、細菌培養を行なっています。
かぜ症状4日目に、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ・カタラーリスのいずれかが検出される割合は、46%でした(38/82)。内訳は以下の通りです:
菌株 | |
インフルエンザ桿菌 | 13 |
肺炎級菌 | 12 |
モラキセラ | 7 |
混合 | 6 |
鼻汁の性状と、最近の検出率もみています:
培養陽性 | 陰性 | ||
膿性 (黄/緑) |
5 | 3 | 8 |
透明 | 33 | 40 | 73 |
38 | 43 | 81 |
膿性の場合、培養が陽性となる割合は62.5%、透明の場合は80.5%となっています。鼻汁が黄色や緑だからといって、培養の陽性率は透明より高いどころか、むしろ低い傾向にあるのがわかります。
感想と考察
膿性鼻汁といると、細菌がいそうなイメージですが、実はそうでもなさそうです。というより、むしろメジャーな菌は検出されにくい傾向にありました。
鼻汁の色は、一般に細菌やウイルスと戦った後の細胞の死骸と考えられています。ですので、鼻汁の色をみて、「鼻汁がかわった=細菌感染かも=抗菌薬を使用しなきゃ」と安易に考えてはいけないでしょうね。
まとめ
今回は、2006年にフィンランドから報告された、かぜの時の鼻腔の培養からえられた細菌検査のデータです。
鼻水の色が緑や黄色でも、必ずしも細菌感染の確率が高いわけではなさそうな結果でした。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/05 00:21:44時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について