感染症

尿路感染症の起因菌の抗菌薬耐性パターンと経験的治療[トルコ編]

今回はトルコから報告された小児の尿路感染症のデータになります。起因菌や耐性菌の問題が述べられていました。

マミー
マミー
日本以外も耐性菌の問題って小児でもあるのでしょうか?

ユーキ先生
ユーキ先生
尿路感染症の耐性菌の分布をだした論文はいくつかあるようです。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • トルコから報告された小児の尿路感染症を対象とした研究
  • 小児の尿路感染症における大腸菌のampicillin,セファロスポリン,IMP,PIPに対する耐性化が進んでいた
  • 耐性パターンは地域によって異なる可能性があるため,経験的な抗生物質の選択は,その地域の細菌群および抗生物質感受性の知識に基づいて行うことが望ましい

参考文献

Catal F, Bavbek N, Bayrak O, Karabel M, Karabel D, Odemis E, Uz E. Antimicrobial resistance patterns of urinary tract pathogens and rationale for empirical therapy in Turkish children for the years 2000-2006. Int Urol Nephrol. 2009 Dec;41(4):953-7. doi: 10.1007/s11255-008-9445-5. Epub 2008 Aug 14. PMID: 18704743.

 2009年にトルコから公表されたようです

尿路感染症の起因菌の抗菌薬耐性パターンと経験的治療[トルコ編]

研究の背景/目的

尿路感染症(UTI)が疑われる患者では,通常,尿培養の結果が得られる前に経験的な抗生物質治療が開始される。

しかし,残念なことに,多くの国で抗生物質耐性が臨床上ますます緊急の課題となっている.本研究の目的は,小児市中感染症における経験的抗菌薬療法の選択肢を検討するために,6年間の一般的抗菌薬に対する尿路感染症の起因菌の抗菌薬感受性の変化を評価することであった。

研究の方法

Fatih University Medical School microbiology laboratoryで処理されたすべての小児尿検体のデータを、6年間(2000年1月~2006年12月)にわたって後方視的に分析した。

Dr.KID
Dr.KID
起因菌のパターンをあれこれ見たようですね。

研究の結果

698名の患者における767件の尿路感染症エピソードから,合計767名の尿路用病原体が分離された.原因菌はEscherichia coli(大腸菌)が最も多く、次いでKlebsiella spp.などであった。

2000年には,大腸菌の60%近くがampicillin(AMP)に,40%以上がCo-trimoxazole(SXT)に,80%以上がgentamicin(GN)に,90%以上がcefuroxime(CXM)とamikacin(AN)に,そして60%以上がpiperacillin(PIP)に感受性が認められた。

2006年には70%以上がAMPに,50%以上がPIPに耐性を示すようになった。2000年にはCIP(2.7%)とCXM(3.4%)がKlebsiella属菌に対して最も有効な薬剤であり,imipenem(IMP)に対する耐性株はなかった。

2006年には,GN(2.7%),CIP(3.5%),CXM(2.7%),AN(8.9%)がこれらの菌種に対して最も有効であったが,IMPに対する耐性は確認されなかった。

E. Coliでは,AMP,CTX,IMP,PIPに対する耐性獲得が統計学的に有意であった。Klebsiella spp.では,AMPおよびCXMに対する耐性獲得が統計学的に有意であった。

結論

耐性パターンは地域によって異なる可能性があるため,経験的な抗生物質の選択は,その地域の細菌群および抗生物質感受性の知識に基づいて行う必要がある。

考察と感想

予想通り,すべての年で最も多い病原体は大腸菌であり,次いで腸内細菌叢のグラム陰性菌でした。

全菌種の約半数がAMPCに耐性を有していましたが、アンピシリンに対する耐性率は,カナダ,ヨーロッパ,アフリカの小児で,それ45%,50%,100%と報告されており、特別高いというわけではなさそうとのことです。

したがって,少なくともトルコやこの報告がなされた地域ではUTIが疑われる場合の経験的治療としてAMPを単剤で使用することは,ほとんどの病原体をカバーすることはできないでしょう.

Dr.KID
Dr.KID
あくまで地域によって最初の治療戦略は変わっていく気がします。

個人的にはピペラシリンへの耐性率が高かった点が気になりました。

まとめ

トルコから報告された小児の尿路感染症を対象とした研究になります。

小児の尿路感染症における大腸菌のampicillin,セファロスポリン,IMP,PIPに対する耐性化が進んでいたようです。

耐性パターンは地域によって異なる可能性があるため,経験的な抗生物質の選択は,その地域の細菌群および抗生物質感受性の知識に基づいて行うことが望ましいでしょう。

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Dr.KID
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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。