小児科

免疫性の血小板減少症の診断に、糖蛋白質 (GP) 特異的抗体は有用?[アメリカ編]

ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。

今回は、この検査が診断の一助になるか、感度・特異度の観点から見ています。

マミー
マミー
小児のITPの診断ってどう行うのですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

 背景・目的

AITP(自己免疫性血小板減少症)は、自己抗体により血小板が破壊されている病態が示唆されている。原因がわからない「特発性」と、SLEやHIVといった疾患による二次的な原因のこともある。

また、非免疫性に血小板が減少することがあり、これらの病態を区別することは重要である。

方法

自己免疫性の血小板減少症 (「特発性」 と 「続発性」 の両方)の216人の患者および他の原因による血小板減少症の46人の患者が対象となった。

新しい市販の糖蛋白質 (GP) 特異的分析 [PakAuto (ブルックフィールド、ウィスコンシン州 (アメリカ合衆国))]を用いて、免疫性 vs. 非免疫性の血小板減少症 (TP) を区別する目的での臨床的有用性を前向きに評価した。

このアッセイはGPs IIb/IIIa, Ib/IX及びIa/IIaに特異的な血小板関連抗体(直接分析)または血漿抗血小板抗体(間接分析)の両方を検出するように設計されている。

結果

平均血小板数は、両グループでは似通っていた:

  免疫性 非免疫性
血小板数
(×109/L)
79±7 78±7

直接分析は、 免疫性のTPの114/216の患者 (53%) および非免疫性のTPの13/46 (28%) で陽性であった。

免疫性のTP群の中で陽性試験結果を示す患者の大部分 (61%) は、 3種類全てのGP標的に対し反応性自己抗体を示した。

直接PakAutoに対する感度、特異度、陽性的中率と陰性的中率は、 GP特異的分析の以前に報告されている研究とほぼ類似しており、以下の通りであった:

  • 感度:53%
  • 特異度:72%
  • 陽性的中率:90%
  • 陰性的中率:24%

しかし、非免疫性のTPの症例の一部では、 PakAutoは高度に特異的であった。

妊娠によるTP患者22人中3人、家族性/先天性のTP患者8人中1人のみが直接アッセイ陽性であった。

結論

免疫性の血小板減少において、糖蛋白質 (GP) 特異的抗体の検出は、過去の報告と同様であった。

この検査が特定の患者サブグループにおけるTPの免疫病因を除外するために時に有用であることを示している。

考察と感想

血小板に対する抗体にも、いくつかの世代があるようです:

  1.  1970年代の第一世代:血小板関連抗体(PAIgG)
  2.   第二世代:血小板表面または全PAIgG
  3.  1980年代の第三世代:GPs IIb/IIIa, Ib/IX及びIa/IIaなどの抗体

のように分かれているようです。

Dr.KID
Dr.KID
ただ、どれも臨床的に使用できるほど感度・特異度は高くはない印象です。

まとめ

今回は、免疫性の血小板減少において、血小板関連抗体の感度・特異度を、異なるアッセイで見ています。

糖蛋白質 (GP) 特異的抗体に関しては、感度は53%、特異度は72%とあまり高くはないようでした。

 

 

created by Rinker
¥4,950
(2024/04/24 09:48:18時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/24 20:06:43時点 Amazon調べ-詳細)

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。