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100%フルーツジュースは小児のBMIや肥満のリスクに影響するのか? [システマティックレビューとメタ解析]

今回はフルーツジュースと小児のBMIや肥満に対する影響を検討した研究をご紹介します。

以前、こちらに2記事ほど記載しましたが、気がつく当ブログの人気記事のようです。

https://www.dr-kid.net/entry-2018-04-07-果汁は1歳になるまでは与えないほうが良い

https://www.dr-kid.net/entry-2018-05-14-乳幼児にフルーツジュースを習慣的に飲ませ

まずおさらいになりますが、2001年以降のアメリカ小児科学会(AAP)からの推奨によると、

  •  1歳未満に果汁(フルーツジュース)は飲ませない
  •  1〜6歳は 1日あたり4〜6 oz (約120〜180ml)以下に控える
  •  7歳以降は、1日あたり8〜12  oz (約240〜350ml)以下に控える

としています。
(*果汁についての見解でして、果肉に関してはカウントしなくてよいです)

過去にも100%フルーツジュースと小児の肥満やBMIを調査したシステマティックレビューとメタ解析はありますが、研究の質が低かったり、重要な研究が入っていなかったりと、いくつかの問題があったようです。そこで、今回のシステマティックレビューとメタ解析が行われたようです。

研究の方法

今回のシステマティック・レビューは以下のデータベースから行われました:

  • PubMed (Medline)
  • Embase
  • CINAHL
  • the Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)

メタ解析の研究に組み入れる基準としては、

  •  100%フルーツジュースを計測している
  •  1〜18歳
  •   BMI or BMIのz-scoreが計測されている
  •  6ヶ月以上追跡されている

などを基準にしています。

小児の場合、BMIを計測して、それをCDCやWHOの基準に照らし合わせてz-scoreを計算しますが、0.25〜0.50の増加をもって臨床的な有意差ありとみなしています。

研究結果と考察

最終的に4657本の論文から36本がメタ解析の候補となり、それぞれの論文を評価して8つの論文がメタ解析の対象となりました。

アメリカからの論文が6本、ドイツが1本、UKが1本です。

それぞれの年齢でわけて報告されているので、みていきましょう。(主にTable 3と4)

1歳児の100%フルーツジュース

1歳児に習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませた場合、2〜7年後にどのくらいBMIが増加しているかをみています。

年数 z-score(BMI)変化
(95%CI)
著者
2−3年後 0.17
(0.01-0.33)
Sonneville et al.
7年後 0.23
(0.05-0.40)
Sonneville et al.

Sonneville et al.の結果のみですが、7年後にBMIのz-scoreが0.23は臨床的にも有意ととれそうなくらいの変化でした。

2-3歳児の100%フルーツジュース

2-3歳児に習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませた場合、2〜3年後までにどのくらいBMIが増加しているかをみています。

年数 z-score(BMI)変化
(95%CI)
著者
1年後 0.06
(0.019-0.101)
Faith et al.
1年後 0.06
(-0.032-0.152)
Newby et al.
2−3年後 0.282
(0.129-0.435)
Sheffery et al.

Sheffery et al.の結果のみですが、2~3年後にBMIのz-scoreが0.23は臨床的にも有意ととれそうなくらいの変化でした。

4歳児の100%フルーツジュース

4歳児に習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませた場合、1年後までにどのくらいBMIが増加しているかをみています。

年数 z-score(BMI)変化
(95%CI)
著者
1年後 0.020
(0.003-0.037)
Sheffery et al.

Faith et al.の結果のみですが、1年後にBMIのz-scoreが0.02と、あまり変化はなさそうな印象です。

7歳以上の100%フルーツジュース

7歳以上の小児に習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませた場合、1〜3年後までにどのくらいBMIが増加しているかをみています。

年数 z-score(BMI)変化
(95%CI)
著者
1年後 男:0.002
(0.000-0.005)
女:0.003
(0.001-0.005)
Field et al.
(12歳児)
1年後 男:-0.001
(-0.088-0.086)
女:0.034
(-0.042-0.109)
Libuda et al.
(12歳児)
1年後 0.003
(0.000-0.006)
Striegel et al.
(10歳女児)
3年後 0.003
(-0.005-0.011)
Dong et al.
(7.5歳)

この年代に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませても、1〜3年後までにBMIはほとんど上昇していないのが分かります。

まとめると…

黒色が1歳、茶色が2−3歳、灰色が4歳の結果になります。
3歳以下のお子さんは、習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませた場合、2〜3年以降にBMIのz-scoreが0.25ほど上昇しています。

4歳については観察期間が1年のものしかなく、臨床的に重要なBMIの増加は、この期間であればなさそうな印象です。

こちらの結果は7歳〜10歳のデータになりますが、習慣的に180-240 ml/日ほどの100%フルーツジュースを飲ませても、あまり体重には影響しなさそうな印象です。

感想と考察

今回の結果をみると、少なくとも2−3歳以下の小児は180-240 ml/日以上の100%フルーツジュースを飲むと、BMIがその後数年の経過で上昇しそうな印象です。

一方で、7歳以上の小児では同様の効果はなさそうですが、同じ180-240 ml/日の100%フルーツジュースでも、体重あたりに換算すると相対的に少なくなるからでしょうか。

ただ、全体として研究数は少なく、コホート研究ですので、バイアスの対処が不十分である可能性はあり得そうです。とはいえ、

  •  1〜6歳は 1日あたり4〜6 oz (約120〜180ml)以下に控える
  •  7歳以降は、1日あたり8〜12  oz (約240〜350ml)以下に控える

としたAAPの方針も、それなりの合理性がありそうに思いました。あるいは、1歳以上は、体重あたり10ml(10 ml/kg/日:10 kgなら100ml)まで、という考え方もあるようです。

今回は1歳未満の乳児は対象になっていないので、別に考える必要があります。基本的に1歳未満の小児に果汁は不要です。詳しくは以下の記事を読んでください:

https://www.dr-kid.net/entry-2018-04-07-果汁は1歳になるまでは与えないほうが良い

まとめ

今回の研究では、100%フルーツジュースがBMIに与える影響をみています。

2−3歳以下の小児は180-240 ml/日以上の100%フルーツジュースを飲むと、BMIがその後数年の経過で上昇しそうな印象です。

一方で、7歳以上の小児では180-240 ml/日の100%フルーツジュースであれば、BMIに与える影響は少なそうです。

研究数は少ないので、もう少し情報の蓄積が必要と考えています。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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