遺伝疫学

Genetic Admixture [遺伝的混合]とその対処法について [遺伝疫学]

前回はpopulation stratificationについて解説してきました。

[遺伝疫学] Population Stratification (人口の構造化) と対処法今回は遺伝疫学的な考え方から、population stratificationとその対処法について解説していきます。 遺伝疫学を詳し...

Population stratificationは、人種や民族(Race/ethnicity)による交絡のことを主にさします。大きな集団を指すので、global stratificationと呼ばれることもあります。

一方で、globalに対して、local stratificationと呼ばれる現象もあります。

これの1つが、genetic admixture[遺伝的混合]です。
今回はgenetic admixtureについて解説していきます。

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Genetic admixtureとは?

Genetic admixtureですが、遺伝的混合のことを言います。

この現象は、複数の集団が島などで隔離されて、交配(interbreeding)を始めた際に起こります。

まずは簡単な例を見ていきましょう。

例1:ABO型

血液型の分布もgenetic admixtureの一種でして、国や地域によって偏りがあります。

本来は血液型は4種類ありますが、O型の人ばかり集まったところでは、全員がO型になります(以下:Bororo)。

例2:乳糖分解酵素

乳糖分解酵素もadmixtureの例の1つです。

乳幼児は乳糖分解酵素の活性が高いですが、年齢とともに活性が低下していくことがあります。

その反面、乳糖分解酵素の活性が全然落ちないかたもいます。そしてこの比率国や地域で異なり、これもadmixtureと考えられます。

Founder effectとBottleneck effect

遺伝子の分布に影響を与える現象として、

  • Founder effect
  • Bottleneck effect

の2つがあります。

イメージとしては、上の図が分かりやすいと思います。

Founder effectについて

Founder effectでは、少数の集団が新しい地域に移住・定住し、そこで人口が増えた場合に起こることがあります。原住民との交配があっても、この現象は起こり得ます。

移住した集団は、これまでの居住地区より似通ったペアで交配する可能性が、他の地域より高くなるので、徐々に遺伝的な情報の分布が似通ってくるのです。

共通の祖先で交配を続けるので、劣性遺伝が原因の疾患の頻度が高くなることもあります。例としては、

  • アイスランド
  • Old Amish
  • Huetterites (フッター派)

などが挙げられます。

Bottleneck effectについて

Bottleneck effectは、図のように先細りの状態です。

つまり、飢餓や流行性の疾患などのせいで、母集団のサイズが著しく少なくなった場合に起こり得ます。

この場合も、遺伝的な多様性が小さくなるからです。

その他の影響

その他、alleleの頻度に与える影響として、

  • Genetic drift
  • Gene flow

などがあります。特に母集団のサイズが小さいと、大きく影響することもあります。

Genetic Admixtureを対処する方法

Genetic admixtureを対処する方法として、

  • Local principal component method
  • Admixture mapping

などがあります。

今回は、後者を説明します。

Admixture mappingについて

Admixture mappingでは、危険因子と思われる遺伝子を人種や民族、居住地域などで別々に分けて分布を示す方法です。

そして、候補となる遺伝子と疾患のリスクの関連性を、それぞれの母集団で見ていく方法です。

このアプローチでは、病気を引き起こす遺伝子の近くには、その病気にかかるリスクの高い集団からの祖先が多いと仮定しています。

したがって、混合されたサンプルセットのゲノムに沿った祖先を計算できれば、それを用いて疾患を引き起こす遺伝子変異を同定することができるのです。

例えば親の母集団(1と2)が移住などの影響で、集団内の交配が多くなった場、遺伝的には似た者同士が出会う確率が高くなります。この場合、2世代の交配以降は、混ざり合った染色体は、祖先のモザイクとなります(2〜3)。

この作業を例えばケース(疾患あり)とコントロールで行います。イメージとしては、以下のようになります:

(Darvasi and Shifman,Nature Genetics 37, 118 – 119 (2005) )

そして、最終的にadmixture scanをcaseとcontrolで行うと、以下のようになります:

↓で示しているように、疾患の原因となりうるlocusを同定できることがあります。

Admixture methodsについて

Admixture mappingは、直近の世代、多くても20世代以内であれば行うことができると考えられています。

しかし、近年は、ソフトウェアが大きなデータに耐え売るようになったため、100世代くらいまで行えるとも言われているようです。

Admixture mappingに必要な前提

必要な前提がいくつかあり、

  • 交配することになった祖先において、疾患の発症率が異なる
  • その母集団のうち、少なくとも10%以上はadmixtureを起こしている

などがあります。

問題点

問題点としては、他の疫学研究と同様な点として、

  • 疾患やphenotypeの定義が曖昧なことがある(誤分類)
  • 交絡

などがあります。

また、genetic admixtureの場合、環境因子による影響も同時に受けていることがありますので、解析段階でこの点の考慮が必要になることがあります。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。