今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。
医療の質の指標は様々あるようですが、今回は小児の入院や外来患者を対象にした医療の質の指標があります。
今回は、喘息の入院率を医療の質として捉えた論文を見つけたので、ご紹介しようと思います。
- イタリアの小児を対象に行われた研究
- 小児の喘息による入院率を指標に、医療の質を計測した論文
イタリアからの報告です。
喘息の入院率を指標にして、小児の医療の質は計測できる?[イタリア編]
研究の背景/目的
小児医療における質の評価は、最近になって勢いを増してきている。
医療の質の指標を開発するためのアプローチの多くは、対象となる母集団に関わらず類似しているが、小児のプライマリ・ケアの評価に特化してデザインされた全国的な指標はほとんど存在しない。
本研究では、入院率の低下がプライマリ・ヘルスケアのパフォーマンスの向上と関連していると仮定して、「小児喘息入院率」指標の有効性を実証的に分析した。
研究の方法
AHRQが提唱する「小児喘息入院率」を指標とした医療の質の評価を、診断コードの選択、入院タイプ、リスク調整に焦点を当てて、イタリアにおける妥当性を検討した
2009年1月1日から2011年12月31日までに退院したイタリアの2~17歳の小児を対象に、退院記録データベースを用いて喘息の入院率の季節性と地域変動を分析した。
2-4歳、5-9歳、10-14歳、15-17歳の年齢階級別に特定の入院率を計算した。
研究の結果
2009年から2011年の小児喘息による入院数は14,389件(年間平均:1,000人当たり0.52件)で、地域間で大きなばらつきがあった。
2~4歳の小児では、喘息による入院のリスクは思春期の14倍であったが、5~9歳では4倍、10~14歳では1.1倍に低下した。
気管支炎の診断を含めると、喘息と気管支炎は入院の原因として同じように表され、未就学児では同じような季節性を持っていることが明らかになったが、それ以上の年齢層では主に春と秋に入院が発生しており、このパターンはアトピー性喘息の診断と一致している。
喘息の日帰り入院率は、リグーリア州と南部の一部の地域では全国平均の最大5倍、北部の一部の地域ではゼロに近かった。
結論
イタリアにおける小児喘息の入院パターンから、小児に提供されるケアの質を正確に測定するためには、少なくとも2つの異なる指標が必要であることが示された。
候補となる指標には、アクセスのしやすさをよりよく評価するために、日帰り入院も含めるべきである。
将来的には、国レベルでの構造化された臨床パネルレビューによる評価が、指標の定義やリスクグループ分けを洗練させ、そのような指標の適切な適用を決定し、政策立案者への提言を行うのに役立つかもしれない。
考察と感想
本文中にはデータの抽出条件なども記載されており、非常に参考になる論文でした。
喘息は管理をしっかりしておけば、少なくとも入院のリスクは下げることはできると思うので、外来診療あるいは地域で提供できる医療サービスの質の指標にはなり得るのかもしれません。
一方で、ICDを使用した研究で、入院の診断名の誤分類などの問題も生じやすいかと思いました。また、喘息と気管支炎の区別も曖昧になってしまうケースも中にはあるでしょう。
まとめ
今回の研究は、イタリアにおける小児の医療の質の指標を検討した研究でした。
この研究では、喘息による入院率を指標にして、地域や年齢層毎のばらつきを検討していました。
類似の研究をもう少し探してみようと思います。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
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小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
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