小児科

小児ITPにおける重症度分類は?[カナダ編]

ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。

前回は、WHO、Bolton-MaggsとMoon、ITP Bleeding Scale、Buchananの使用した出血スケール、Mederiosらの出血スケール、2002年のBuchananのスケールを中心に解説してきました。

別の指標が1993年にもRCTで使用されていたようです:

小児のITPでは、IVIG, ステロイド, 無治療のうちどれが良いか?[カナダ編]今回は、小児ITP患者において、IVIG、ステロイド、抗D免疫グロブリンを比較したランダム化比較試験があります。 ...

今回は、こちらの評価をレビューした論文を解説します。

ポイント

  •  1993年に発表されたRCTのITPのBleeding Scale
  •  妥当性の評価は行われていない
マミー
マミー
WHOやBolton-Maggsの指標はとても曖昧に思いました。他にもITPの出血の重症度って、ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

Blanchette VS, Luke B, Andrew M, Sommerville-Nielsen S, Barnard D, de Veber B, Gent M. A prospective, randomized trial of high-dose intravenous immune globulin G therapy, oral prednisone therapy, and no therapy in childhood acute immune thrombocytopenic purpura. J Pediatr. 1993 Dec;123(6):989-95.

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

マミー
マミー
ITPって、なんですか?

Dr.KID
Dr.KID
原因不明で血小板のみが減少して、出血しやすくなる状態を言います。

 Blanchetteの重症度スコア [1993]

Blanchetteらも小児ITPにおける出血の重症度をRCTにおいて定義しています。

出血部位、出血の進行および輸血の必要性を組み入れた特定の基準に従って、出血を中等度または重度に分類した。

しかし、部位別および全身の影響は別々に評価されていない、至ってシンプルな分類です。

 中等度の出血

限局性または全身性のあざまたは点状出血が認められる場合

classified as moderate if localized or generalized bruising or petechiae were present

 重度の出血

以下のいずれかが認められる場合は重度に分類:

  • 広範な粘膜出血
  • 入院後のあざや点状出血の範囲の著しい増加
  • 眼底出血
  • 赤血球輸血を必要とする鼻出血
  • 肉眼的血尿
  • 消化管出血
  • 頭蓋内出血

as severe if any of the following was present: extensive mucosal hemorrhage; a marked increase in the extent of bruising or petechial lesions, or both, after admission to the hospital; fundal hemorrhage; and significant overt bleeding, defined as epistaxis requiring replacement erythrocyte transfusion support, macroscopic hematuria, gastrointestinal bleeding, or intracranial hemorrhage.

考察と感想

おおざっぱな分類としては良いかもしれないですが、臨床経過を追ったり、治療の評価をして使うのは難しそうですね。

Dr.KID
Dr.KID
「主観的であり、大きく2つに分けただけです。臨床像の変化に感受性があまりない。」と別のcritical reviewで評価されていました。

まとめ

今回は1993年の観察研究で使用された、小児ITPの重症度分類について、どのように評価されているか解説しました。

ITPの重症度を大まかに捉えるのにはよいかもしれませんが、主観的であり、臨床像の変化に感受性があまりないようです。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/25 20:09:23時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。