小児科

ITPの臨床的な重症度の指標は?[1977年]

ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。

前回は、WHO、Bolton-MaggsとMoon、ITP Bleeding Scale、Buchananの使用した出血スケール、Mederiosらの出血スケール、1993年と2002年のBuchananのスケールを中心に解説してきました。

今回は、1977年に報告されたLaceyらの指標をみてみましょう。

ポイント

  •  1977年に発表されたRCTのITPのBleeding Scale
  •  妥当性の評価は行われていない
マミー
マミー
WHOやBolton-Maggsの指標はとても曖昧に思いました。他にもITPの出血の重症度って、ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
成人のものになりますが…、過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

Lacey JV, Penner JA. Management of idiopathic thrombocytopenic purpura in the adult. Semin Thromb Hemost 1977;3:160-74.

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

マミー
マミー
ITPって、なんですか?

Dr.KID
Dr.KID
原因不明で血小板のみが減少して、出血しやすくなる状態を言います。

 Laceyの重症度スコア [1977]

Laceyらは、血小板減少症の成人において、出血の重症度を評価するために0~4の尺度を用い、PLT数と関連付けた。

この定義の弱点は、カテゴリーが非常に広く、さらに主観的であることである。重度の出血に対する記述の臨床的意義は様々であり、この記述は包括的ではないです。

実際にスコアをみてみましょう。

 重症度のスコア

Grade 0

出血なし

Grade 1

外傷からの出血で、最小限である

Grade 2

自然に出血してくるが、自然と軽快してくる

Grade 3

自然と出血してきて、特別な介入・注意が必要(鼻出血の止血処置など)

Grade 4

大量出血で、コントロールするのが難しい

考察と感想

大まかな分類ですので、全体像をぱっと把握するにはよい指標なのかもしれません。

一方で、再現性の研究はなく、体全体の出血と局所での出血の区別がありません。

基準の記載をみれば、オーバーラップしてしまいそうなカテゴリーもあります。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、成人のほうでは血小板数との相関も調べられているようです。。

まとめ

今回は1977年に評価されたITPの重症度分類について、どのように評価されているか解説しました。

ITPの重症度を大まかに捉えるのにはよいかもしれませんが、主観的であり、臨床像の変化に感受性があまりないようです。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/24 20:06:43時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。