鼻腔と副鼻腔は自然孔で交通があります。このため、鼻腔や鼻汁を培養に提出すれば、副鼻腔炎の起因菌を予測できるのではないかという考えもあるようです。
一方で、一般論として小児の場合、鼻腔培養は副鼻腔炎の病原微生物を予測できないといわれています。今回は、この根拠となる論文をみてみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 小児の副鼻腔炎の患者において、鼻腔と副鼻腔の分泌物を培養検査
- 鼻腔と副鼻腔の培養結果はあまり一致していなかった
Wald, et al. Acute Maxillary Sinusitis in Children. N Engl J Med 1981; 304:749-754
一般に、小児の鼻腔の培養と副鼻腔炎の病因微生物には相関がないと考えられています。
研究の概要
今回は、1981年にアメリカから報告された研究です。
副鼻腔炎の小児の副鼻腔から直接分泌物を採取して培養し、さらに咽頭や鼻腔からの培養と一致しているか否かを調査しています。
研究結果
副鼻腔の培養 | |||
一致 | 異なる | 増殖せず | |
鼻腔 | 4/17 | 6/17 | 7/17 |
咽頭 | 2/17 | 9/17 | 4/17 |
鼻腔の培養が、副鼻腔の培養と一致する割合は、わずか23.5%程度のようですね。むしろ、異なることのほうが割合としては高かったようです。
感想と考察
「鼻腔培養は副鼻腔炎の原因微生物の間には相関ない」というのは、よく聞いていましたが、今回はその根拠?となる論文にたどり着くことができました。
副鼻腔の分泌液を得るには、副鼻腔を穿刺して培養しないといけないため、合併症がない場合は通常は行われないため、貴重な報告と思いました。
まとめ
今回は、1981年にアメリカから報告された、鼻腔と副鼻腔の培養の一致を比較した研究です。
鼻腔培養は副鼻腔炎の原因微生物を予測しないため、検査を行う意義は乏しそうですね。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/13 00:36:18時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について