今回の研究は、パキスタンで行われ、手洗いが、家庭での胃腸炎や感冒の感染率を低下するか検討しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- クラスターRCTで手洗いの感染予防効果を検証
- 小児の下痢、肺炎、膿痂疹の発生率が低下した
- 普通の石鹸も抗菌石鹸も効果はかわらない
手洗いの指導や、石鹸やハンドソープを提供すると、乳幼児の下痢の発症率は低下すると報告した研究は多数あります。
研究の概要
背景
世界では、下痢と急性呼吸器感染症により、毎年350万人以上の5歳未満の小児が死亡している。
石鹸による手洗い促進が急性呼吸器感染症、膿痂疹、下痢の発生率に及ぼす影響を評価するため、無作為化比較試験を行った。
方法
パキスタンのカラチで、25の地域を無作為に手洗い促進に割り当てるクラスター・ランダム化比較試験が行われた。
手洗い促進地区では、抗菌石鹸と通常の石けんに割り当てられた。
研究者らは、石鹸世帯の居住者による手洗いを奨励し、1年間にわたり毎週家庭を訪問し、全世帯における症状を記録した。
主要エンドポイントは、下痢、膿痂疹、急性呼吸器感染症(すなわち、リスクのある人-週当たりの疾患の新規エピソード数)であった。肺炎はWHO臨床症例定義に従って定義した。
解析はIntention-to-treat (ITT)により行われた。
結果
石けんと手洗い促進を受けた世帯の5歳未満の子供は、コントロールと比較して、肺炎の発生率が50%低かった(95%CI, -65%~-34%)。
また、石けんを使用した世帯の15歳未満の子どもは、コントロールと比較して、下痢の発生率が53%低く[-65%~-41%]、膿痂疹の発生率が34%低かっ[-52%~-16%]。
疾患の発生率は、普通の石けんと抗菌石けんでは、ほとんど差はなかった。
解釈
石鹸による手洗いは、世界的に最も多くの小児死亡を引き起こす2つの臨床症候群、すなわち下痢と急性下気道感染症を予防する。毎日の入浴と一緒に手洗いすることも、膿痂疹を予防します。
感想と考察
個人的に面白い研究だと思いました。まず、手洗いが各種感染症の予防効果を示唆しています。今、あれこれ論文を読んでいますが、膿痂疹を含む皮膚感染症の予防効果を示したものは少ない印象です。
また、通常の石鹸と抗菌石鹸を比較している点もユニークですね。抗菌石鹸を使用した方が、なんとなくよさそうなイメージのある保護者が多いかもしれませんが、現実にはそうでもなさそうです。
まとめ
パキスタンにおいて、石けんと流水の有効性を検討した研究です。
手洗いを奨励すると、肺炎、下痢、膿痂疹の発生率が低下しています。
一方で、普通の石鹸と抗菌石鹸ではほぼ同等の効果でした。
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