麻疹

麻疹の重症度とビタミンAの関連[アメリカ編]

この研究は、アメリカ合衆国でのはしかにかかった子供たちの血清レチノール(ビタミンA)濃度に関する重要な調査を行っています。

過去に発展途上国で行われた研究では、はしかに罹患した子供たちのレチノール濃度が低く、これが死亡率と関連していることが示されていました。

本研究は、アメリカ合衆国の都市部でのはしか流行時における子供たちのレチノール濃度を調べ、その濃度が病気の重症度とどのような関連があるのかを明らかにしようと試みます。

参考文献

Butler JC, Havens PL, Sowell AL, Huff DL, Peterson DE, Day SE, Chusid MJ, Bennin RA, Circo R, Davis JP. Measles severity and serum retinol (vitamin A) concentration among children in the United States. Pediatrics. 1993 Jun;91(6):1176-81. PMID: 8502524.

麻疹の重症度とビタミンAの関連[アメリカ編]

研究の背景/目的

発展途上国での研究によると、はしかにかかった子供たちはレチノール(ビタミンA)濃度が低く、低レチノールレベルははしか関連の死亡率と関連していることが示されています。アフリカのはしかの子供たちに対するビタミンA治療は、死亡率を減少させることが示されています。

この研究は、アメリカ合衆国のはしかにかかった子供たちの血清レチノール濃度が低いかどうか、また、レチノール濃度が病気の重症度と関連しているかどうかを決定することを目的として実施されました。

研究の方法

1989-1990年のはしか流行中、ウィスコンシン州ミルウォーキーの小児紹介病院およびクリニックで研究が行われました。

対象は、発疹発現から5日以内に血清を得た、5歳以下のはしかの血清学的に確認された114人の患者です。

血清レチノール濃度は高性能液体クロマトグラフィーによって測定されました。臨床データは病院記録のレビューによって収集されました。生理的不安定さを病気の重症度の尺度として評価するために、修正小児死亡リスク(PRISM)スコアが使用されました。

研究の結果

レチノール濃度は0.25から1.18μmol/L(中央値0.58μmol/L)の範囲で、82人(72%)の患者が低レチノール濃度(0.70μmol/L以下)を有していました。

入院患者(0.56対0.70、P = .006)および肺炎を持つ患者(0.52対0.64、P = .02)の中央レチノール濃度は低かったが、中耳炎を持つ子供たちの間では高かった(0.63対0.54、P = .01)。

高い修正PRISMスコアは、大きな生理的不安定さを反映し、低いレチノール濃度と関連していた(ベータ係数-.0147、P = .025)。

多変量解析では、修正PRISMスコアがより高いことが、入院、合併症の有無、人種、年齢、扶養家族手当の受給、性別、発疹発症から血清採取までの間隔をコントロールした後も、より低いレチノール濃度と関連していた(ベータ係数-.0144、P = .025)。

結論

アメリカ合衆国の都市部ではしかにかかったこれらの子供たちの中で、レチノール濃度は低下しており、その低下の程度は病気の重症度と関連していました。

アメリカ合衆国で入院が必要なはしかの子供たちに対して、ビタミンA治療を検討するべきです。

考察と感想

この論文は、アメリカ合衆国における麻疹にかかった子供たちの血清レチノール(ビタミンA)濃度と病気の重症度の関連を探求しており、いくつかの重要な発見を提示しています。以下は、この研究の考察ポイントです。

研究結果は、麻疹にかかった子供たちの中でレチノール濃度が低いことを示し、特に入院患者や肺炎を持つ患者でこの傾向が顕著でした。この発見は、ビタミンA濃度の低下がはしかの重症度と関連していることを示唆しています。

ビタミンA補給が麻疹にかかった子供たち、特に入院が必要な症例において重要であることを示唆しています。これは、発展途上国での研究結果に沿ったものであり、ビタミンAがはしかの重症化を防ぐ可能性があることを示しています。

この研究はアメリカ合衆国の特定地域(ウィスコンシン州ミルウォーキー)で行われたため、地域差を考慮する必要があります。他の地域や国でのレチノール濃度と麻疹の重症度の関係は異なる可能性があります。

この研究は公衆衛生の観点から重要であり、麻疹の流行時におけるビタミンA補給の重要性についての意識を高めることができます。特に、麻疹の予防接種が不十分な地域や、麻疹の発生が多い地域において、ビタミンAの補給は子供たちの健康を守る上で重要な役割を果たす可能性があります。

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/26 20:15:38時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。