Yamaguchi A, Oh-Ishi T, Arai T, Sakata H, Adachi N, Asanuma S, Oguma E, Kimoto H, Matsumoto J, Fujita H, Uesato T, Fujita J, Shirato K, Ohno H, Kizaki T. Screening for seemingly healthy newborns with congenital cytomegalovirus infection by quantitative real-time polymerase chain reaction using newborn urine: an observational study. BMJ Open. 2017 Jan 20;7(1):e013810. doi: 10.1136/bmjopen-2016-013810. PMID: 28110288; PMCID: PMC5253530.
新生児における先天性サイトメガロウイルス感染症のスクリーニング:新生児の尿を用いた定量リアルタイムPCRによる観察研究
研究の背景/目的
無症候性先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染症の新生児の約8~10%が感音難聴(SNHL)を発症します。しかし、cCMV感染症におけるCMV負荷、SNHLおよび中枢神経系(CNS)損傷との関係は不明です。
本研究は、新生児のcCMV感染症における尿中のCMV負荷、SNHLおよびCNS損傷の関係を調査することを目的としました。
研究の方法
本研究では、埼玉県の2つの産科病院から23,368人の新生児を対象としました。
cCMV感染症の尿スクリーニング(定量リアルタイムPCR)および新生児聴覚スクリーニング(自動聴性脳幹反応(AABR)検査)は出生後5日以内に実施され、それぞれのcCMV感染症およびSNHLの発生率を調査しました。
CNS損傷はcCMV感染症の新生児のMRIで評価しました。
研究の結果
cCMV感染症の発生率は60/23,368(0.257%;95%CI 0.192%〜0.322%)でした。cCMV感染症の新生児の尿中CMV DNAコピー数の幾何平均は1.79×10^6コピー/mL(95%CI 7.97×10^5〜4.02×10^6)でした。
AABR検査では、22,229人の新生児のうち171人(0.769%)に異常が認められました。これら171人の新生児のうち22人(12.9%)がSNHLと診断され、そのうち5人(22.7%)がcCMVに感染していました。
cCMV感染症とSNHLを持つ新生児は、SNHLを持たないcCMV感染症の新生児よりも尿中CMV DNAコピー数が多かった(p=0.036)。
MRIでは、cCMV感染症の新生児の83.0%に白質異常を含むCNS損傷が認められました。さらに、CNS損傷がある新生児は、CNS損傷がない新生児よりも尿中CMV負荷が有意に多かった(p=0.013)。
結論
埼玉県の2つの病院で、見た目には健康な新生児におけるcCMV感染症の発生率と尿中CMV DNAコピー数を確認しました。
SNHLおよびCNS損傷は尿中CMV DNAコピー数と関連していました。尿中CMV負荷の定量は、遅発性SNHLおよび神経発達障害の発生を予測するのに有効かもしれません。
考察と感想
この論文は、新生児の先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染症のスクリーニング方法として、尿を用いた定量リアルタイムPCR(qPCR)の有用性を検討した非常に重要な研究です。以下にこの研究の感想を述べます。
強みと意義
まず、この研究は非常に大規模なサンプルサイズ(23,368人の新生児)を用いており、その結果の信頼性と一般化可能性が高い点が評価できます。さらに、新生児の尿を用いたqPCRという非侵襲的かつ正確な方法を採用していることは、新生児スクリーニングの実用性を大きく向上させる可能性があります。この手法は、従来の方法よりも迅速かつ効率的であり、早期の診断と治療介入を可能にする点で非常に有望です。
結果のインパクト
研究結果から、cCMV感染症と感音難聴(SNHL)、および中枢神経系(CNS)損傷との関連が明らかになりました。特に、尿中のCMV DNAコピー数が高い新生児において、SNHLやCNS損傷のリスクが増加することが示されています。これは、将来的なSNHLや神経発達障害を予測するための重要な指標となり得ます。
この情報は、医療現場での新生児ケアにおいて非常に価値があります。
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