ワクチン

アセトアミノフェンは、ワクチン接種直後に使用すると、長期的に抗体価に影響するか?

  •  ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
  •  あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?

ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。

また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。

アセトアミノフェンを使用した研究は複数あり、今回は、0〜1歳の小児において、ワクチン接種直後に使用すると、その後の抗体維持やブースター時の抗体獲得に影響するかを検討した研究をご紹介します。

マミー
マミー
予防接種後の発熱が怖いので、解熱薬を使用しても良いですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
論文によって結果はやや異なるようです。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に読んでみましょう。

ポイント

  •  ワクチン接種後の局解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
  •  初期のワクチン接種直後に解熱薬を使用した場合、その後の抗体維持率がやや下がる印象
  •  解熱薬は、ブースター時の抗体の獲得率にはほとんど影響しない
参考文献

Vaccine. 2013 Apr 12;31(16):2080-8.

   パラセタモール=アセトアミノフェンです

アセトアミノフェンは、ワクチン接種直後に使用すると、長期的に抗体価に影響するか?

研究の背景/目的

前回、予防的にパラセタモール (PP) を使用すると、10価の肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザ菌蛋白質D結合型ワクチン (PHiD‐CV) の一次および追加接種時に、抗体反応を低下させることが示された。

本研究では,抗体の持続性,免疫学的記憶および鼻咽頭保菌 (NPC) に対するパラセタモールの効果をさらに評価した。

研究の方法

以前にPHiD‐CVでプライム(3回, NCT 00370318)およびブースト (NCT 00496015) され, 予防的パラセタモール(PPグループ)または投与なし(NPPグループ)でPHiD‐CVを受けた220人の子供を対象とした、

以前のワクチン接種後の免疫学的記憶の誘導を評価するため,四歳時にPHiD‐CVを一回受けた。

試験NCT 00496015に登録された年齢をマッチさせた感作されていない小児の対照群は、試験的に4価(Neisseria meningitidis血清群A、C、W-135、Y破傷風トキソイド結合型)ワクチンを投与されたため、肺炎球菌ワクチン接種のための感作されていないままであった。

この223人のPHiD-CVを接種されていない子供は,この研究で少なくとも一つのPHiD‐Cの2回のキャッチアップレジメンを受けた。PHiD‐CVプライム化された子供の免疫学的記憶の評価のためのコントロールとした。

Dr.KID
Dr.KID
少し複雑なデザインですね。。。

研究の結果

免疫記憶の誘導は,初回および追加ワクチン接種時のパラセタモール(PP)投与に関係なく示された。

血清型1, 4, 7 Fおよび9 Vに対する抗体の幾何平均濃度はPP群でやや低かった。

オプソノファゴサイトーシスの力価はPP群とNPP群の間で有意差はなかった。

パラセタモール(P)Pの以前の使用は,抗体持続に僅かな影響しか与えないようであった。

ワクチン肺炎球菌血清型の鼻咽頭保菌 (NPC) の低下および非ワクチンおよび非交差反応性血清型のNPCの増加傾向は, PPとNPP群の間の明らかな違いはなく,コントロール群に対して見られた。

結論

以前のPHiD‐CVワクチン接種時においてパラセタモールの使用の有無にかかわらず, 免疫記憶の誘導および保菌に対するPHiD‐CVの影響の持続は,ブースターワクチン接種後少なくとも28か月まで見られた。

従って, パラセタモール(PP)による一次及び追加ワクチン接種後の低い免疫応答は一過性であることが示唆された。

考察と感想

2009-2010年にチェコで行われた追加試験のようですね。少しナラティブの解説してみようと思います。

最初の試験は、アセトアミノフェンあり vs. なしで、肺炎球菌・インフルエンザ桿菌のワクチンの抗体獲得率を比較したものでした。

この研究結果では、解熱薬(アセトアミノフェン)をワクチン接種直後に使用すると、抗体の獲得率がやや低いという結果でした。この結果のフォローアップ研究という位置付けです。

4歳時点で、アセトアミノフェンをあり/なし、さらに上述のワクチンを接種していないコントロールグループの3つに分けています。この3グループにおいて、4歳時点のワクチンの追加接種時の抗体価を調査すると、

  •  解熱薬を使用しなかったグループの方が抗体価は高い
  •  解熱薬を使用したグループは、コントロールよりは抗体価は高い

という結果でした。

Dr.KID
Dr.KID
4歳時点では、「ワクチン接種あり+解熱薬なし」>「ワクチン接種あり+解熱薬あり」>「ワクチン接種なし」という結果でした。

さらに、ワクチンをブースターとして追加接種した後の抗体価も比較しています。この場合は、抗体価にもほとんど影響がないように見えますね。

Dr.KID
Dr.KID
2つの研究のまとめはnoteに記載しました。

まとめ

今回は、チェコで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、その後の抗体価の推移や、追加接種時の反応に影響するかをみています。

ワクチン接種直後に解熱薬を使用したグループは、4歳の追加接種前の抗体獲得率は低い傾向にありました。一方で、追加接種後の抗体獲得率は、解熱薬を使用してもほとんど影響がなさそうです。

 

まとめnoteもあります。

 

 

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Dr.KID
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小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。