小児科

小児ITPにおける重症度評価は?[Bolton-MaggsとMoonの出血スケール]

ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。

今回は、Bolton-MaggsとMoonの指標を中心に考察をしていこうと思います。

イギリスからの報告のようで、のちに妥当性の評価もされているようです。

ポイント

  •  Bolton-MaggsとMoonの出血グレードに関して解説
  •  妥当性の評価も行われているよう
ユーキ
ユーキ
ITPの重症度って、どうされているのですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

Assessment of UK practice for management of acute childhood idiopathic thrombocytopenic purpura against published guidelines

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

マミー
マミー
ITPって、なんですか?

Dr.KID
Dr.KID
原因不明で血小板のみが減少して、出血しやすくなる状態を言います。

 Bolton-MaggsとMoonの出血の重症度の分類

出血グレードの大まかな分類は以下の通りです

グレード 解説
なし 出血なし
軽度

あざや点状出血があり、ときに軽度の鼻出血がある。
日常生活への支障はほとんどないor 全くない

中等度 いくつかの粘膜病変を伴う、より重度の皮膚症状。
止血がやや難しい鼻出血
月経過多
重度 入院または輸血を必要とする出血エピソード(鼻出血、下血、月経過多、頭蓋内出血)
生活の質に重大な影響を及ぼす症状

 

考察と感想

原著での記載は以下の通りです:

(1) none or mild—no bleeding at all or bruising, petechiae, occasional mild epistaxis with very little or no interference with daily living;

(2) moderate—more severe skin manifestations with some mucosal lesions and more troublesome epistaxis or menorrhagia;

or (3) severe—bleeding episodes (epistaxis, melena, menorrhagia, and/or intracranial hemorrhage) requiring hospital admission and/or blood transfusions, that is, symptoms interfering seriously with quality of life.

WHOの出血グレードは、ITPのために作られたものではい点、非常に曖昧な記載が多いという点から、よく批判の対象にされていたようです。

ITPという背景で提唱されているので、前者に関しては改善しているようです。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、曖昧な記載や、主治医によって評価が変わってしまいそうな項目が多いですね。

まとめ

今回は主にイギリスの研究などで使用されているBolton-MaggsとMoonの出血スケールについて解説しました。

WHOの出血の重症度分類より、小児ITPの背景では適している印象です。

 

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Dr.KID
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noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。