今回は、小児の自己免疫性の血球減少症において、リツキシマブを投与した報告です。こちらもアメリカで行われた研究のようです。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児における自己免疫性の血球減少症はしばしば治療的介入を必要とする。
難治性またはステロイド依存性の該当患者に対して、リツキシマブを用いた前向き小児多施設試験を報告する。
方法
リツキシマブ(375 mg/m^2́/dose)週1回 x 4回の投与した。
3回投与後に反応を示さなかった患者には、 750 mg/m^2́/dose/週×3へと用量の増加をした。
安全性、有効性および免疫学的試験を治療後に評価した。
リツキシマブの投与量は以下の通りだったようです:
Rituximab was administered at a dose of 375 mg/m2 weekly for 4 weeks. Dose escalation of rituximab was offered to patients that had no improvement in affected blood counts after the first three doses. The dose was increased to 750 mg/m2 weekly3 to total six doses if parents/guardians and the medical care team were in agreement. Premedication prior to each dose consisted of oral acetaminophen and IV diphenhydramine and hydrocortisone. All infusions were administered in the outpatient setting over approximately 4 hours and monitored by medical staff.
前投薬も行っていたようですね。
結果
血小板減少症 (21例) 、溶血性貧血 (6例) 、 Evans症候群 (2例) 、好中球減少症 (1例) の小児30例中29例(2~18歳)に少なくとも4回リツキシマブを投与した。
1例は初回投与でアナフィラキシーを発症した。
1人の患者はその後モノソミー7骨髄異形成と診断された。
残りの28人の患者のうち、 9人は用量増加が必要であった。
治療に奏効した患者はリツキシマブ投与後に他の治療を中止した。
全奏効率は72%であり、追跡期間中央値は18ヵ月であった。
完全寛解は14例 (50%) に認められた;全員がリツキシマブを4回投与された。
部分寛解 (PR) は6例 (22%) に認められた;5人は増量を受けていた。
治療4~24か月後の再発4例のうち、 2例はリツキシマブで再治療し、第二寛解を達成した。主要な感染症には遭遇しなかった。
B細胞は1か月で枯渇し、1年で正常化した。
IgM, Ig A,及びIgGレベルはそれぞれ治療後6, 9, 12か月で減少したが、ほぼ正常範囲に留まった。
破傷風トキソイド抗体価は検出可能なままであった。
結論
リツキシマブは忍容性が良好で、難治性免疫細胞減少症の小児において持続的寛解を誘導した。
再燃後の用量漸増および再治療により、さらなる反応が得られた。
リツキシマブ療法は、より高い毒性を伴う可能性のある治療法の前に、選択肢の1つとして考慮すべきである。
考察と感想
様々な疾患が含まれていましたが、慢性ITPだけのデータをみると、以下の通りでした。
治療回数 | 4回 | 6回 |
年齢 | 3〜18歳 | 8〜14歳 |
リツキシマブ投与 開始までの期間 |
6ヶ月 (1-24) |
19ヶ月 (12-48) |
N | 13 | 6 |
完全寛解 | 10 | 0 |
部分寛解 | 1 | 4 |
反応なし | 2 | 2 |
完全寛解の基準が、他の研究とは微妙に異なるのが気がかりです:
- 完全寛解:> 7.5万/μL
- 部分寛解: 3-7.5万/ μL
- 反応性なし:< 3万/ μL
論文によって定義が変わってしまうのは、少しミスリーディングかもしれないですね。
まとめ
今回は、小児の自己免疫性の血球減少症において、リツキシマブを投与した場合の経過をおった研究です。
小児のITPに関しては、この研究の治療レジメンでは完全寛解率は55%ほどでした。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
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