賢明な医療の選択

NICUにおいて、無条件でバンコマイシンやカルバペネムを経験的に使用しない[Choosing wisely]

今回は、NICUにおける抗菌薬の適正使用に関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
NICUにおける抗菌薬の適正使用に関して、教えてください

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:NICUにおける抗菌薬の選択
  •  バンコマイシンやカルバペネムを、無条件で経験的に使用しない

American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely

NICUにおいて、無条件でバンコマイシンやカルバペネムを経験的に使用しない[Choosing wisely]

Don’t use vancomycin or carbapenems empirically for neonatal intensive care patients unless an infant is known to have a specific risk for pathogens resistant to narrower-spectrum agents.

Antibiotics such as vancomycin and carbapenems are active against highly-antibiotic resistant bacteria unresponsive to other antibiotics. Overuse of these antibiotics can exert selection pressure and promote colonization and infection with increasingly resistant organisms, raising the specter of morbidity and mortality due to untreatable infection. Vancomycin in particular is commonly used as a first-line choice when infection is suspected in the newborn intensive care unit, despite evidence that there is no survival benefit attributed to empiric therapy for most infected infants. Guidelines have been developed that can safely limit the empiric use of vancomycin to those infants known to be colonized with MRSA.

バンコマイシンやカルバペネム系抗生物質は、スペクトラムの狭い抗生物質に耐性のある病原体に対する特別なリスクがあることが知られていない限り、新生児集中治療患者に経験的に使用しない。

バンコマイシンやカルバペネム系の抗生物質は、他の抗生物質に反応しない高度な抗生物質耐性菌に対して有効である。これらの抗生物質を使いすぎると、耐性菌のコロニー化や感染が促進され、治療不能な感染症による罹患率や死亡率が高まる可能性があります。

特にバンコマイシンは、新生児集中治療室で感染が疑われた場合の第一選択薬として一般的に使用されていますが、感染したほとんどの乳児に対して経験的治療を行っても生存率の向上は見られないという研究結果があります。そこで、バンコマイシンの経験的使用を、MRSAに感染していることが判明している乳児に限定し、安全に使用するためのガイドラインを作成しました。

考察と感想

NICUにおける抗菌薬の選択に関してでした。

この領域は非常に不勉強な点が多いので、参考文献も読んでみようと思います:

Hsieh EM, Hornik CP, Clark RH, Laughon MM, Benjamin DK Jr, Smith PB; Best Pharmaceuticals for Children Act Pediatric Trials Network. Medication use in the neonatal intensive care unit. Am J Perinatol. 2014;31(9):811-821.

Ericson JE, Thaden J, Cross HR, Clark RH, Fowler VG Jr, Benjamin DK Jr, Cohen-Wolkowiez M, Hornik CP, Smith PB; Antibacterial Resistance Leadership Group. No survival benefit with empirical vancomycin therapy for coagulase-negative staphylococcal bloodstream infections in infants. Pediatr Infect Dis J. 2015;34(4):371-375.

Thaden JT, Ericson JE, Cross H, Bergin SP, Messina JA, Fowler VG Jr, Benjamin DK Jr, Clark RH, Hornik CP, Smith PB; Antibacterial Resistance Leadership Group. Survival Benefit of Empirical Therapy for Staphylococcus aureus Bloodstream Infections in Infants. Pediatr Infect Dis J. 2015;34(11):1175-1179.

Chiu CH, Michelow IC, Cronin J, Ringer SA, Ferris TG, Puopolo KM. Effectiveness of a guideline to reduce vancomycin use in the neonatal intensive care unit. Pediatr Infect Dis J. 2011;30(4):273-278.

Holzmann-Pazgal G, Khan AM, Northrup TF, Domonoske C, Eichenwald EC. Decreasing vancomycin utilization in a neonatal intensive care unit. Am J Infect Control. 2015;43(11):1255-1257.

まとめ

今回は、NICUにおける抗菌薬の適正使用に関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。