Cancer Epidemiology (がんの疫学)

Cancer Epidemiology (がんの疫学)⑥| 肺癌の疫学

前回は世界におけるがんの疫学について簡単に説明してきました。

Cancer Epidemiology (がんの疫学)⑤| がんの疫学今回は国際的にみた「がんの疫学」について解説していきます。 具体的には、がんの  発症  死亡  罹患 の3つに...

今回は、肺癌に注目して疫学の話をしていこうと思います。

Cancer Epidemiologyの教科書は以下↓

Cancer Epidemiology

肺癌の発症と死亡

肺癌の発症と死亡数ですが、2018年に

  •  209万人の新規発症
  •  176万人の死亡

が生じたと推定されています。

近年は途上国での発症が増えています。男女比はおよそ2.16と推定されており、男性の割合が2倍以上です。

ご存知の方が多いと思いますが、タバコへの曝露が肺癌の発症に大きく影響しています。

国別にみた発症と死亡

国別にみた発症と死亡は以下の通りです。

発症、死亡とも

  1.  中国
  2.  アメリカ
  3.  日本

の順番です。人口と高齢化の分布が決め手でしょう。

年齢調整後の発症・死亡率について

各国で年齢の分布が異なるので、その分布を調整した発症率と死亡率は以下の通りです。

年齢調整発症率は以下の通りでした:

  1.  ハンガリー
  2.  セルビア
  3.  フランス

年齢調整死亡率は以下がトップ3です:

  1.  ハンガリー
  2.  セルビア
  3.  ギリシア

年齢を調整して、率に変換すると少し景色が変わりますが、トップ2はハンガリー、セルビアで変わらないのですね。

国別にみた男性の発症率

国別にみた男性の肺癌発症率を見てみましょう。

主に東アジアと東欧が高いのが分かります。

国別にみた女性の発症率

女性の肺癌の発症率はどうでしょうか。

女性は中国、欧州、北米あたりが高いのが分かります。

男女別の年齢調整発症率

男女別の年齢調整発症率は以下の通りになります。

男性はミクロネシア、ポリネシア、東欧などが高い傾向にあります。

一方で、女性は北米、欧州、豪州・ニュージーランドなどが高いのが分かります。

 

肺癌の危険因子について

肺癌の危険因子として代表的なものはタバコの喫煙ですが、それ以外にもいくつか危険因子が分かっています。

タバコ 最もメジャーな危険因子
職業曝露 石炭ガス化
コークス製造
多環式芳香族炭化水素(PAH)
ベンゼン類
フタル酸塩
酸化鉛
クロム酸塩
環境因子 受動喫煙
料理の煙
空気汚染
行動要因 食事
アルコール
遺伝要因 遺伝的感受性 (特にDNA修復遺伝子)
遺伝的不安定性
年齢(テロメアの短縮化)

 

おわりに

今回は肺癌の国際的な疫学について簡単に解説してきました。
気になる方は、IARCはGLOBCANなどの資料を参照されると良いでしょう。

次回は乳癌について解説していければと思います。

Cancer Epidemiologyの教科書は以下↓

Cancer Epidemiology

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。