Cancer Epidemiology (がんの疫学)

Cancer Epidemiology (がんの疫学)⑤| がんの疫学

今回は国際的にみた「がんの疫学」について解説していきます。

具体的には、がんの

  •  発症
  •  死亡
  •  罹患

の3つについて言及していければと思います。

がんの発症と発症率について

発症はその名の通りでして、特定期間内の新規のがんの症例数を言います。

一方で、発症率は10万人あたりの新規患者数になります。XX cases per 100,000 persons per yearなどと表現されることが多いです。

発症率(Incidence rate)は、異なる集団での比較に使われることがあります。

また、「発症率の低下」というと、一次予防効果として評価をされることがあります。

がんの死亡と死亡率について

死亡とは、とある期間における死亡者数です。

死亡率は、母集団における死亡者数の割合のことでして、XX per 100,000 death per yearと表現されることが多いです。

死亡率は、二次予防(スクリーニング)の効果として評価されることがあります。

がんの罹患と罹患率について

罹患の場合、新規発症と既に発症した人の区別はせず、一定の期間でその病気を持っている人の数を言います。

このため、罹患率は、発症と生存から成立しています。

罹患率を見る場合、期間を指定しますが、

  •  1年:初期治療
  •  3年:臨床的なフォロー
  •  5年;寛解

を指標とすることが多いようです。

生存と生存率について

生存率ですが、(5年を区切りにすることが多いです)決められた期間内に生存ている患者の割合を言います。

生存にも、observed survavalとrelative survivalがあります。

Observed survivalでは、実際にがん患者を追跡して、そのうち何人が生存しているかを示した割合になります。

Relative survivalは、がんになった患者のうち、どのくらいの割合で生存することが期待されるかを示した数値となります。

発症率と生存率の統計について

最後に発症率と死亡率の統計について、簡単に解説しましょう。

発症率について

発症率を示した表は以下の通りになります。

  男性 女性
31.5 14.6
  46.3
結腸・直腸 23.6 16.3
15.7 7
肝臓 13.9 4.9
前立腺 29.3  
子宮頸部   13.1
食道 9.3 3.5

(/10万人あたり)

男性では、肺、前立腺、結腸・直腸の順で発症率は高いです。

一方で、女性の場合は、乳、肺、直腸・結腸の順です。

発症に関しては半分くらいがアジアです。

死亡率について

死亡率を示した表は以下の通りになります。

  男性 女性
27.1 11.2
  13.0
結腸・直腸 10.8 7.2
11.7 5.2
肝臓 12.7 4.6
前立腺 7.6  
子宮頸部   6.9
食道 8.3 3.0

(/10万人あたり)

男性の死亡率は、肺癌、肝臓癌、胃癌の順に高いです。

一方で、女性の死亡率は、乳癌、肺癌、結腸・直腸癌の順です。

死亡については5割以上がアジアが占めているのが現状です。

まとめ

今回は世界的ながんの疫学について解説してきました。2019-20年時点のものである点はご了承ください。

次回は肺がんについて疫学的なお話をしようと思います:

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。