前回、IVIG, ステロイド、抗D免疫グロブリンの有効性を比較した研究を紹介しました。
実は、この研究にもいくつかフロー(欠陥)があったようで、レターで投稿されています。Lancetのような有名でも、こういったことが起こりうるため、注意してみる必要がありますね。
今回はこのレターについて、簡単に触れてみましょう。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
1994年にLancetから報告された多施設合同RCTがあります。この研究では、急性ITPと診断された146人の小児を対象に、IVIG、ステロイド、抗D免疫グロブリンのいずれかを投与し、血小板が回復するまでの期間を比較しています。結果は以下の通りでした:
この結果によると、抗D免疫グロブリンは血小板数< 2万/μLの期間が長く、血小板数>5万/μLに回復するまでに時間がかかり、慢性ITPと診断される割合が高い傾向にありました。
一方で、この研究にはいくつかの欠陥があるのではないかとレターが投稿されています。内容としては、methodに記載された治療プロトコールと実際の診療の乖離、抗D免疫グロブリンが本来無効であるRh (-)の患者もランダム化されている(実際には抗D免疫グロブリンは割り当てられてはいなかったようです)、などがあげられています。
Rh(+)だけの患者データで解析をし直すと、抗D免疫グロブリンは他の薬剤と比較して有効性が大きく劣るわけではなさそうです。
考察と感想
このレターをみると、かなり一悶着あったようですね。
正直、どちらの言い分も疫学的にみてあっているところと、そうでないところがあり、どちらが正しくてというわけではなさそうな印象をうけました。
例えば、この著者は、第2、第3の治療をもとに、ITT解析について批判をしていますが、あまり疫学的な考え方を理解していない印象をうけました。
一方で、最初に論文を提出した著者らは、Rh(+)とRh(-)で分けてランダム化をしたのに、それをmethodに記載しなかったり、このblocked RCTに沿った解析をしていないなど、問題もあったのだろうと思いました。
まとめ
今回は、小児のITPにおいて、IVIG、ステロイド、Anti-Dを比較したRCTへのレターの紹介でした。
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