小児科

小児ITP患者は、IVIGとステロイド、Anti-Dはどれがよい?

今回は、小児ITP患者において、IVIGとステロイドを比較したランダム化比較試験があります。

ポイント

  • 小児のITPにおいて、ステロイドパルスとIVIGを比較したRCT
  •  IVIGのほうが血小板数の増加速度は早かった
マミー
マミー
小児のITPの治療って何がありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

背景・目的

I小児の急性免ITPの最も重篤な合併症は頭蓋内出血であり、血小板数が20×10^9́/L(2万/μL)未満の小児の約1%に発生する。

著者らは、この高リスク群において、3つの治療選択肢を比較・検討するために、ランダム化試験を実施した。

方法

生後6カ月以上18歳未満で、典型的な急性ITPであり、血小板数 < 20×10^9́/Lの小児146人を、

  •  免疫グロブリン (IVIG) 1 g/kgを連続2日間(n=34)
  • IVIG 0.8 g/kgを1回(n=35)
  • 抗D抗体 25μg/kgを連続2日間(n=38)
  • 経口プレドニゾン4 mg/kg/日とプレドニゾンの漸減(21日間)(n=39)

の投与に無作為に割り付けた。

Dr.KID
Dr.KID
いろんなレジメンを比較していますね。

結果

  • 血小板数が20×10^9́/L(20,000 /μL)以下になるまでの日数
  • 血小板数が50×10`9́/L以上になるまでの時間

は、抗D抗体群よりもIVIG群で速い経口にあった。

プレドニゾンとIVIgGの差はIVIgG 0.8 g/kg群のみで有意(p<0.05)であり、 2つのIgG群に対する反応は類似していた。治療開始後72時間で血小板数が20×10`9́/L以下であった小児の割合は、 3% (IVIgG 0.8 g/kg×1)、 6% (IVIgG 1 g/kg×2)、 18% (抗D) 、 21% (経口プレドニゾン4 mg/kg/日)であった。投与に関連した毒性には、抗D (生後6カ月以上18歳未満)によるヘモグロビンの減少が含まれていた;経口プレドニゾンによる体重増加

結論

IVIGおよびメチルプレドニゾロンはともに血小板数の有意な早期上昇をもたらしたが、 IVIGの方がやや多い。

しかし、 IVIGによって生じる血小板数の増加は、この薬剤のコストおよび潜在的なリスクを正当化しない可能性があるため、追加検証が必要である。

考察と感想

小児の急性ITPにおいて、IVIGのほうが急激に血小板数が上昇するのは、実臨床にも沿ったデータであると思います。

一方で、IVIGとステロイドを比較した場合、前者のほうがコストが大きくかかります。日本のデータでも、前者を使用した場合に、10万円以上のコストが高くついたというデータもあります。

高いコストに見合う価値があるのか、そういった議論がでてくるのも自然なながれのように思います。

Dr.KID
Dr.KID
単純にお金の比較でなく、いろんな観点からの議論が必要でしょう。

まとめ

今回は、小児のITPにおいて、IVIGとステロイドを比較したRCTです。

いずれも血小板数増加に大きな役割を果たしていますが、IVIGのほうが急速に血小板数が増加する傾向にあるようです。

 

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。