科学的根拠

風邪に対して、偽薬のプラセボ効果は本当にあるのか? アメリカ編

「プラセボ効果」と聞いたことがある方も多いかもしれません。
プラセボとは偽薬のことです。偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられることを「プラセボ効果」と呼んでいます。

プラセボ効果は様々な疾患で認められるのかもしれませんが、一番身近なのは、風邪でしょう。
正直、風邪に有効のある薬はほとんどないですし、有効性のあると統計学的に示唆された薬ですら、その効果はかなり限定的です。

ですが、例えば、クリニックに受診して、風邪の薬を処方してもらうと、なんとなく症状が軽くなった気もするかもしれません。この現象は、ひょっとしたらプラセボ効果によるものかもしれません。

今回は、この「プラセボ効果」を検証した研究を解説します。

研究の方法

今回の研究は、アメリカのウィスコンシンで行われたランダム化比較試験です。対象となったのは、

  •  12歳以上
  •  風邪症状が2つ以上あり(Jackson’s 8 symptoms)
  •  アレルギー性鼻炎や喘息はない
  •  そのほか、慢性疾患はない

方が対象となっています。

治療について

治療は、

  •  何も処方しない
  •  プラセボを処方
  •  エキナセア(プラセボと区別できない)
  •  エキナセア(プラセボと区別できる)

のいずれかをランダムに割付て、4日間の内服を支持しています。

エキナセアは、Echinacea purpureaと E. angustifoliaの抽出物を使用していたようです。

アウトカムについて

アウトカムは、

  •  かぜの症状の期間や重症度
  •  血液検査:IL-8や好中球数
  •  副作用

などを計測しています。

研究結果と考察

最終的に719人が研究に参加しました。治療グループの内訳は、

  •  174人:何も処方しない
  •  179人:プラセボを処方
  •  184人:エキナセア(プラセボと区別できない)
  •  182人:エキナセア(プラセボと区別できる)

となっています。

平均年齢はおよそ30歳ほど、女性が6割、喫煙者は10%ほどで、貧困世帯は35%でした。

かぜの症状と重症度について

かぜの症状と重症度の平均値を見ています。重症度はセルトミドglobal severity scoreという指標を使用して、高いほど重症度が上がります。

      エキナセア
  なし 偽薬 盲検 オープン
期間 6.42 6.47 6.04 6.16
重症度 220 206 193 195

何も処方しない場合、症状の期間はプラセボとほとんど変わりませんが、重症度については何も処方されないグループの方がやや高く評価しています。
エキナセアグループの方が、症状の期間が半日弱ですが短く、重症度も10点ほど低くなっていますね。

サブグループ解析

ここからさらに患者を絞り込んで、サブグループ解析をしています。例えば血液検査の結果(前後の差)は以下の通りです:

      エキナセア
  なし 偽薬 盲検 オープン
IL-8 30 39 58 70
好中球 1.0 1.0 2.0 1.0

IL-8の差は何も処方されなかったグループが最も低い傾向にありましたが、統計学的な有意差はなかったようです。

そのほか、副作用の訴えについては、何も処方されなかったグループは

  •   下痢が少ない
  •   頭痛が多い
  •   胃のむかつきが多い

といった傾向にありました。

考察と感想

著者らはabstractでは、中央値でなく平均を報告していましたが、ややデータが偏っていそうな印象でしたので、中央値の方を選んでいます。
著者らの記載と私は解釈が少し異なり、症状の期間に関しては、処方なしとプラセボ処方とでは、ほとんど差はないと思います。一方で、重症度については、15ポイントほどの差があります。この重症度スコア自体を使用したことがないので、この差が臨床的に、どのくらい重要かは少し判断が難しいと感じています。

一方で、エキナセアを使用したグループは、何も処方しないグループと比較すると、症状がやや短縮し、重症度のスコアも低くでている印象ですね。純粋なエキナセアの効果か、あるいは何らかの形でエキナセアとわかってしまったことによる効果かもしれないですね。ただし、後者については、「エキナセアを投与されたと思いますか?」と試験終了時に質問しており、正答率が高くないことから、可能性はそれほど高くはないと思っています。

まとめ

今回の研究は、アメリカで12歳以上を対象に、かぜに対してプラセボ効果を検討しています。

プラセボ効果は症状の重症度スコアを改善させる可能性はありそうで、期間については短縮させなそうな印象でした。

客観的な指標( 血液検査)には影響してなさそうですね。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。