ロイコトリエン拮抗薬

モンテルカスト(キプレス®︎)は小児の細気管支炎後の咳や喘鳴に有効か?

RSウイルスですが、1歳までの50%ほどの小児が罹患し、3%ほどが入院が必要になると考えられています。
また、2歳までのほとんどのお子さんが罹患することがあります。

RSウイルスによる細気管支炎に罹患した後、同様のエピソードを繰り返したりすることがあるのは、よく知られています。
あるいは、咳が起こりやすかったり、風邪をひいた後にぜーぜーしやすいこともあります。

ロイコトリエン拮抗薬は、主にモンテルカスト(キプレス®︎、シングレア®︎)やプランルカスト(オノン®︎)が処方されていますが、喘息の長期管理薬として使用されています。
喘息と細気管支炎は病態がやや異なりますが、モンテルカストを長期的に投与して、喘鳴やひどい咳の予防になるかを今回の研究では評価しています。

 

研究の方法

今回の研究は、多施設で行われたランダム化比較研究になります。

  •  24ヶ月以下の小児
  •  RSウイルスによる初感染で入院
  •  感染後24時間以内
  •  慢性疾患なし

などが研究対象の基準となっています。

治療は、

  •  モンテルカスト
  •  プラセボ

のいずれかをランダムに割りつけられ、3ヶ月ほど投与されています。

アウトカムは、

  •   咳や喘鳴の症状のない日数
  •   気管支拡張薬やステロイドの使用
  •   再受診
  •  呼吸状態の悪化 

などを指標にしています。

これらのアウトカムは、2週、6週、9週、12週、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月後に外来フォローで確認されているようです。

Dr.KID
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かなり綿密な外来フォローですね!

研究結果と考察

83人が研究に参加し、25人が途中でドロップアウトしています。やや追跡期間が長いので、仕方ない面もありますね。

Dr.KID
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ドロップアウトが多いと、選択バイアスを生じることがあります。

最後まで追跡できた58人が研究の対象となっています。

症状のない期間

RSV細気管支炎後の症状消失期間(昼&夜)の中央値を比較しています。

  •  モンテルカスト:48.5日(33〜66)
  •  プラセボ:57日(29〜71日)

でした。プラセボのほうが症状のない期間はやや長くよさそうな印象ですが、統計学的な有意差はありませんでした。

夜だけの症状にすると、

  •  モンテルカスト:63.5日(51〜68.5)
  •  プラセボ:73日(51〜83日)

でした。

Dr.KID
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あまり症状を改善させる効果はないばかりか、症状なく過ごせる期間が短くなってしまっていますね。

呼吸状態の悪化

1年後のフォローで喘鳴などの再燃をみています。

  •  モンテルカスト:41人
  •  プラセボ:54人

でした。プラセボのほうが、やや成績は悪そうですね。

この結果をperson-time法を使用して、Incidence Rate Ratioに直すと、以下のようになります。

モンテルカストを使用したグループのほうが喘鳴や咳が悪化する頻度は低そうですが、統計学的な有意差には達していないようです。

その他の指標

その他の指標もtableにしてみましょう。

  M
N =  31
P
N =  27
1回以上の増悪 20 21
増悪までの期間 25日 6日
再受診 41 54
3回以上の受診 31 27
吸入ステロイド 5 3
全身ステロイド 0 0

感想と考察

モンテルカストを使用しても、RSウイルス細気管支炎後の咳・喘鳴といったエピソードの予防効果はなさそうな印象でした。
その反面、統計学的な有意差はないものの、呼吸状態の悪化や再受診率などはやや低い印象で、この解釈には頭を悩ませてしまいますね。

今回の研究は入院患者がメインで、この中に喘息になりうる患者も多くいたのではないでしょうか。この場合、将来、喘息と診断されるようなポテンシャルのあるこどもには効いて、そうでない子には効かずという現象が起こっていたかもしれません。このことを、effect  measurem modificationと呼んだりしています。

問題としては、最初の入院時点でこの「ポテンシャル」を判断するのが難しい点ですね。統計学的な有意差が出なかったとして、「モンテルカストには意味がない、メリットがない」と、前例でやめてしまうのも、やや問題のある判断になってしまうと思います。このあたりのグレーゾーンがわかりやすくなるといいですね。

Dr.KID
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統計学的な有意差と臨床的な重要性は混同しないようにしましょう。

まとめ

モンテルカストを使用しても、RSウイルス細気管支炎後の咳・喘鳴といったエピソードの予防効果はなさそうな印象でした。
その反面、統計学的な有意差はないものの、呼吸状態の悪化や再受診率などはやや低い印象でした。

サンプル数も少なく、ドロップアウトも多い研究ですので、他の研究結果も参考にする必要があると思います。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。