科学的根拠のある子育て・育児

米国小児科学会のスクリーンタイムの制限は妥当なのか?

  • スクリーンタイム(テレビやスマホを使用する時間)は乳幼児の発達に影響しうるので、気を付けましょう

乳幼児健診などでよく聞く話かもしれません。

アメリカ小児学会は、2016年までは「2〜5歳のスクリーンタイムは2時間まで」としていましたが、ガイドラインを改訂して「1時間まで」としているようです。

今回の研究は、この方針に科学的な根拠があるか、疑問を投げかけた研究です。

ポイント

  •  2〜5歳の幼児とスクリーンタイムに関して
  •  アメリカ小児科学会は2016年まではスクリーンタイムは2時間まで、2016年以降は1時間までを推奨している
  •  解析は不十分ではあるものの、この研究から1時間までに制限するメリットはあまり認められなかったよう
マミー
マミー
スクリーンタイムってどうなのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。

 研究の概要

幼児のスクリーンエンゲージメントが彼らの幸福にどのように関連しているかについての経験的理解はほとんどない。

2歳から5歳の親への19,957回の電話インタビューからのデータは、過去1か月における子供のデジタルスクリーン使用と心理的幸福感の関連性を調査した。

保護者への愛着、レジリエンス(回復力)、好奇心、および肯定的な感情(positive affect)の観点から評価した(1〜5点評価)。

2時間未満(2010年のアメリカ小児科学会の基準)を見てしている場合の結果は以下の通りでした(統計解析では、小児の人種、年齢、性別、世帯収入、および保護者の学歴のばらつきが考慮しています):

  B 95%CI
愛着 0.04 [-0.016〜0.024]
回復力 0.035 [0.009〜0.061]
好奇心 0.02 [-0.015〜0.019]
感情 -0.011 [-0.024〜0.003]

2010年のアメリカ小児科学会の基準を守ったとしても、それぞれの項目に与える影響はほとんどなさそうです。

さらに、最新の厳しい基準(1時間未満)に設定を変えてみるとどうでしょうか:

  B 95%CI
愛着 -0.023 [-0.045〜-0.002]
回復力 0.010 -[0.018〜-0.038]
好奇心 -0.001 [-0.019〜0.017]
感情 -0.026 [-0.040〜-0.012]

1時間未満に制限しても、ほとんど効果はなさそうですね。むしろ、愛着形成や正の感情といった面にはマイナスの影響が少しだけでています。

この研究結果によると、米国小児科学会が推奨する制限を実施することを支持していません。
結果から、制限値を設定することが有益なのか、保護者よび専門家の資源を賢明に利用することになるか、これらの判断には、さらなる研究が必要である

感想と考察

意外な結果でした。スクリーンタイムが長いと、乳幼児の発達や情緒面、親子関係に悪影響があるというのは、定説のように語られていますが、それに対して一石を投じた論文です。

しかし、この研究は横断研究であり、この論文をもって決定的というには根拠は乏しいように思います。

Dr.KID
Dr.KID
アメリカのデータを、イギリスの研究者が使ったようですね。データをオープンにすると、こういうこともあるようですね。

まとめ

今回の研究では、アメリカの横断研究において、スクリーンタイムと幼児の心理的幸福面を評価しています。

アメリカ小児科学会の推奨するスクリーンタイムの制限と幼児の情緒面には、ほとんど影響がなかったようです。ただし、研究のデザインから、バイアスの混入などもあり得るため、この研究から決定的なことをいうのは難しいように思いました。

 

乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓

スクリーンタイムのまとめnote

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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