科学的根拠のある子育て・育児

年齢依存性のRSウイルス感染リスク:血清学的データからの系統的レビューとモデリング

RSVに関する血清有病率調査からのエビデンスをまとめるために、系統的な文献レビューが行われた研究を紹介します。

 

年齢依存性のRSウイルス感染リスク:血清学的データからの系統的レビューとモデリング

研究の背景/目的

現在、RS ウイルス(RSV)に対する予防接種キャンペーンは存在しません。血清の有病率調査は、予防接種プログラムの前と中で疫学動向を評価するために重要です。

RSVに関する血清有病率調査からのエビデンスをまとめるために、系統的な文献レビューが行われました。

研究の方法

PubMedデータベースとEMBASEを使用して、年齢依存性のRSV血清有病率の系統的な検索が行われました。

年齢依存性の感染力(FoI)と免疫の減衰率が推定されました。

Mixture finite model が用いられ、年齢依存性の疾患状態と感受性および感染/回復した集団の抗体濃度を推定しました。

研究の結果

15カ国から21の研究が特定され、ELISAを使用した研究が最も多く見つかりました。

catalytic modelを用いて、年齢依存性の感染力は、6ヶ月から1歳の乳児で最も低く、より年齢の高いグループでは増加しました。

3歳までに感染/回復した割合は90%以上と推定されました。

結論

広範な年齢層をカバーする血清有病率研究の数は限られています。年齢依存性のFoIは、感染リスクが5歳以上の人々の間で最大であることを示しています。RSV感染の伝播動力を完全に記述するためには、有効な試験を使用した追加の実証データが必要です。

考察と感想

この論文は、RSウイルス(RSV)の感染リスクが年齢によってどのように変動するかを綿密に調査しており、特にまだ予防接種プログラムが存在しない状況下でのこのウイルスの血清疫学的特性についての理解を深めることに貢献しています。

一方で、広範な年齢層をカバーする血清有病率調査の数が限られているという重要な制限を明らかにしています。これは、RSV感染の伝播動力を完全に記述するためには、さらなる実証データと有効な試験が必要であることを示しています。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/09 01:48:10時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。