小児科

小児ITPの重症度の分類について[Medeirosらの指標]

ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。

前回は、WHO、Bolton-MaggsとMoon、ITP Bleeding Scale、Buchananの使用した出血スケールを中心に解説してきました。

今回は、別の指標が1998年に使用されていたようなので、そちらを読んでみました。

ポイント

  •  Medeirosの Bleeding Scale
  •  妥当性の評価は行われていない
マミー
マミー
WHOやBolton-Maggsの指標はとても曖昧に思いました。他にもITPの出血の重症度って、ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

Major hemorrhage in children with idiopathic thrombocytopenic purpura: Immediate response to therapy and long-term outcome

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

マミー
マミー
ITPって、なんですか?

Dr.KID
Dr.KID
原因不明で血小板のみが減少して、出血しやすくなる状態を言います。

 Buchananのbleeding score

このスコアは、1998年にMederiosやBuchananらが行った観察研究で使用た指標です。

後方視的な研究において、MedeirosおよびBuchananは、出血部位、特定の介入、およびHb値の変化に基づいて、小児のITPにおける大出血または臨床的に重要な出血を定義しています。

日本語バージョン

  1.  頭蓋内出血
  2.  焼灼又は鼻パッキングを要する鼻出血
  3.  肉眼的血尿
  4.  ヘモグロビン濃度が10 g/dL以下又はベースラインのヘモグロビン値から2 g/dL以上低下する程度の粘膜又は皮膚出血

のいずれか1つ以上がITPの経過中に認められた場合、「臨床的に重要な出血」と定義された。

英語バージョン

英語では、以下のように記載されていました:

clinically important or major hemorrhage was defined as the presence of 1 or more of the following occurring at any time during the course of ITP: (1) intracranial hemorrhage, (2) epistaxis requiring cautery or nasal packing, (3) gross hematuria, or (4) other mucosal or cutaneous hemorrhage severe enough to cause a decline in the patient’s hemoglobin concentration to ≤10 g/dL or ≥2 g/dL below the patient’s baseline hemoglobin value.

考察と感想

出血の程度と部位、特定の介入/処置から重症か否かを定義しています。

やや曖昧なところが気がかりです。例えば、鼻出血を焼却やパッキングをする閾値は、医師によって多少はばらつきがありそうな印象です。

Hb 2 g/dL以上の低下と言われても、ベースラインのデータが分からないケースもあるでしょう。

Dr.KID
Dr.KID
同じ研究者らの指標ともあって、Buchananの1984年の指標と同じ問題が残っている印象です。

まとめ

今回は1988年の観察研究で使用された、Medeiroらの小児ITPの重症度分類について解説しました。

特定の部位での出血、必要とされた介入/処置、Hb低下を指標に使用されているのが特徴的でした。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/24 20:06:43時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。