小児科

小児ITPにおける出血の重症度分類は?[アメリカ編]

ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。

前回は、WHOやBolton-MaggsとMoon、ITP Bleeging Scaleを中心に解説してきました。

この中では、最後のITP bleeding scaleが良さそうな印象でした。

今回は、別の指標が1984年に使用されていたようなので、そちらを読んでみました。

ポイント

  •  Buchananの Bleeding Scale
  •  妥当性の評価も行われていない
マミー
マミー
WHOやBolton-Maggsの指標はとても曖昧に思いました。他にもITPの出血の重症度って、ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

参考文献

Buchanan GR, Holtkamp CA. Prednisone therapy for children with newly diagnosed idiopathic thrombocytopenic purpura. A randomized clinical trial. Am J Pediatr Hematol Oncol. 1984 Winter;6(4):355-61.

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

マミー
マミー
ITPって、なんですか?

Dr.KID
Dr.KID
原因不明で血小板のみが減少して、出血しやすくなる状態を言います。

 Buchananのbleeding score

このスコアは、1984年にBuchananらが行った小児ITPとステロイドのRCTで使用された指標です。

ブキャナンらは、小児ITPにおけるプレドニゾンのRCTにおいて、新規出血の重症度を前向きに評価するために、 5点「出血スコア」を記載しています。

来院当日の新規出血の重症度を0~4段階のスケールで評価しています。基準は、「疑わしいvs.確定」の皮膚または粘膜出血病変の存在、およびHbレベルの変化から構成されています。

日本語バージョン

Scale  
0 新規の出血は明らかにない
1 疑わしい新しい点状出血またはあざ
2 皮膚および/または粘膜の出血性病変がはっきりと認される
3 ヘモグロビンの測定可能な減少のない中等度から重度の皮膚または粘膜出血
4 患者のヘモグロビンの1.0 g/dl以上の減少を引き起こすのに十分な大きさの重度の外部出血
 

英語バージョン

英語では、以下のように記載されていました:

Scale  
0 definitely no new bleeding
1 questionable new petechiae or bruises
2 definite new cutaneous and/or mucosal hemorrhagic lesions
3 moderate to severe cutaneous or mucosal bleeding without a measurable decline in hemoglobin
4 severe external bleeding of sufficient magnitude to cause a decline in the patient’s hemoglobin by more than 1.0 g/dl

 

考察と感想

WHOやBolton-Maggsらの指標はやや曖昧という印象でした。

こちらの指標は少し実用的で、具体的にはHbの低下を指標にして重症度をつけているのがわかります。

一方で「Hb低下」をどう定義するのかは難しいですね。例えばHb 10であったとして、もともと鉄欠乏性貧血で低下したのか、ITPによる出血なのか、はっきりと分からないケースが多いのではないでしょうか。

あとは、「中等度」「重度」などと書かれていますが、これが具体的にどのくらいのレベルなのか、医療者によって変わってしまう可能性もあります。

Dr.KID
Dr.KID
曖昧さが残ってしまっていますね。

まとめ

今回は1984年のRCTで採用された、Buchananらの小児ITPの重症度分類について解説しました。

WHOの基準よりITP用に改良されており、Hb低下を指標に使用されているのが特徴的ですが、曖昧な記載が多く、実臨床ではやや使いづらいかもしれません。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/25 20:09:23時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。