科学的根拠のある子育て・育児

乳幼児が下痢のときに、食事やミルクを制限したほうがよいのか?[ペルー編]

  •  下痢の時、腸の負担を減らすため、食事を避けましょう
  •  牛乳由来のミルクをやめましょう

という指導もあるようです。

胃腸炎の際、腸が荒れており、腸管からの吸収が低下しているため、このような指導をされることがあるようです。

しかし、実際に飲食物を含めて、あれこれ制限するのはデメリットがあるかもしれません。今回は、この点を触れた論文の解説をしようと思います。

ポイント

  • 小児が下痢をしたときに、牛乳の成分避けたり、炭水化物を避ける必要があるか検討した研究
  •  飲食に制限をすると、かえって下痢の期間は長くなる傾向にある
マミー
マミー
下痢のとき、食事はどうしたら良いですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

近年の報告やガイドラインをみると、下痢の時に、ミルク変更したり、乳製品を避けたり、特別な変更は必要はないと考えられています。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、牛乳からできた人工乳を続けるべきか、炭水化物の摂取をつづけたほうがよいのか、それを比較・検討した研究になります。

ペルーで、1986年に行われたランダム化比較試験(RCT)になります。

 対象患者

対象となったのは、

  •  生後3〜24ヶ月
  •  96時間以内の胃腸炎
  •  1日1回以上の下痢

の患者が対象です。

治療

治療は、脱水の補正を行なった後に

  • 牛乳からできた人工乳 (M)
  • 加水分解乳 (HM)
  • 牛乳からできた人工乳 + 小麦の麺(angel hairという製品) (N-WM)
  • 加水分解乳+ 小麦の麺(angel hairという製品) (N-HM)

をランダムにわりつけています。

研究結果

結果は以下の通りでした

1. 治療の失敗率

治療の失敗は

  •  脱水の再発
  •  重度の下痢(350 g/日)
  •  長引く下痢(6日目に > 100 g/日)

と定義し、以下の通りでした。

  治療失敗率
WM 14.3%
(1.3-27.3)
HM 20.0%
(12.7-27.3)
N-WM 3.4%
(0-10)
N-HM 3.4%
(0-10)

炭水化物(離乳食用の麺)を制限したほうが、治療失敗率が高かったです。

2. 下痢の期間

下痢の期間(平均)ですが、

  下痢の期間
WM 138時間
(88-214)
HM 113時間
(12.7-27.3)
N-WM 52時間
(35-76)
N-HM 67時間
(45-100)

通常のミルクのほうが、体重増加には有利なデータです。

3. 下痢の原因について

  •  大腸菌(25%)
  •  ロタウイルス(22%)

のようでした。1980年代のペルーですので、現代の先進国とは病原体の分布が異なる印象ですね。

 感想と考察

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえて牛乳の成分避けたり、炭水化物を避ける必要はなさそうな印象ですね。

むしろ、あれこれと制限をしてしまうと、下痢の期間は延長しています。

Dr.KID
Dr.KID
制限を加えると、何となくよさそうな印象もあるかもしれませんが、変更するメリットはなさそうです。

まとめ

今回は、乳児の下痢に対して、炭水化物や通常の人工乳を制限すべきかを検討しています。

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえて牛乳の成分避けたり、炭水化物を避ける必要はなさそうな印象ですね。

類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/25 20:09:23時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
RELATED POST