賢明な医療の選択

孤立性の鈍的臓器損傷の小児において、血行動態的に正常である場合、ルーチンでヘモグロビンとヘマトクリットの検査を繰り返さない[Choosing wisely]

今回は、鈍的臓器損傷の小児におけるモニタリングに関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
鈍的臓器損傷の小児におけるモニタリングに関して、どうしたら良いのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:鈍的臓器損傷の小児におけるモニタリングに関して
  •  必要な状態でない限り、ルーチンで検査を繰り返さない

  American Academy of NursingからのChoosing Wisely

孤立性の鈍的臓器損傷の小児において、血行動態的に正常である場合、ルーチンでヘモグロビンとヘマトクリットの検査を繰り返さない[Choosing wisely]

Don’t routinely repeat labs hemoglobin and hematocrit in the hemodynamically normal pediatric patients with isolated blunt solid organ injury.

Preset timed interval measurements of hemoglobin and hematocrit are no longer indicated as early detectors of instability. Clinical instability is defined by physiologic criteria such as age-specific tachycardia or hypotension, tachypnea, low urine output, altered mental status, or any significant clinical deterioration that warrants increased level of care and investigation. Therefore, the routine use of repeat laboratories studies in children with isolated solid organ injury who have physiologically normal vital signs for their age is not necessary.

孤立性の鈍的臓器損傷の小児において、血行動態的に正常である場合、ルーチンでヘモグロビンとヘマトクリットの検査を繰り返す必要はない。

ヘモグロビンとヘマトクリットの時間差測定は、もはや不安定性の早期検出器としては使えない。

臨床的不安定性は、年齢に応じた頻脈や低血圧、頻呼吸、尿量の低下、精神状態の変化などの生理学的基準によって定義され、より高度なケアや調査を必要とする重大な臨床的悪化がある。

したがって、年齢に応じて生理的に正常なバイタルサインを示す孤立性固形臓器損傷の小児に対して、繰り返し検査を行うことは必要ありません。

考察と感想

外傷後のモニタリングとしての検査に関するchoosing wiselyでした。鈍的な傷害で、血行動態が安定していれば、余分な検査は必要ないというのは、その通りと思いました。出血すればバイタルサインなどに現れるため、そちらをしっかり見るというのは、合理的な気もします。

参考文献も読んでみようと思います:

Acker S, Petrun B, Partrick D, Roosevelt, G, Bensard D. Lack of utility of repeat monitoring of hemoglobin and hematocrit following blunt solid organ injury in children. J Trauma Acute Care Surg. 2015; 79: 991-994.

Fallon S, Delemos D, Akinkuotu A, Christopher D, Naik-Mathuria B. The use of an institutional pediatric abdominal trauma protocol improves resource use. J Trauma Acute Care Surg. 2016; 80: 57-63.

Golden J, Mitchell I, Kuzniewski S, Lipskar A, Prince J, Bank A, Stylianos S, Rosen G. Reducing scheduled phlebotomy in stable pediatric patients with blunt liver or spleen injury. J Pediatr Surg. 2014; 49: 759-762.

Holmes JF, Lillis K, Monroe D, Borgialli D, Kerrey B,Mahajn P, Adegais K, Ellison A, Yen K, Atabaki S, Menaker J, Bonsu B, Quayle KS, Garcia M, Rogers A, Blumber S, Lee L, Tunik M, Kooistra J, Kowk M, Cook L, Dean JM, Sokolove PE, Wisne DH, Ehrlich P, Cooper A, Dayan PS, Wootton-Geroges S, Kuppermann N, Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN). Identifying children at very low risk of clinically important blunt abdominal injuries. Ann Emerg Med. 2013; 107-116.

まとめ

今回は、鈍的臓器損傷の小児におけるモニタリングに関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

created by Rinker
¥6,600
(2024/11/05 08:45:03時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/05 00:21:45時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。