- 川崎病にステロイドはNG
とまで言われていた時代がありました。
詳細は省略しますが、1980年代に行われた観察研究や症例集積などで、ステロイドを使用した場合の冠動脈病変が多かったのが影響しているようです。
1990-2000年代もいくつか研究が行われていますが、結果はどうでしょうか。
- 2007年のアメリカからの報告
- 川崎病に対して、アスピリン+IVIGに、ステロイドパルスを併用
- 炎症マーカーは改善するも、冠動脈瘤のリスクは低下せず
アメリカから報告された有名な研究の1つですね
研究の概要
背景:
免疫グロブリン静注およびアスピリンによる急性川崎病の治療は、冠状動脈異常および全身性炎症のリスクを低下させる。
しかし、免疫グロブリン静注療法にもかかわらず、冠状動脈病変が何人かの子供で生じる。
これまでの複数の研究によると、ステロイド併用療法は有益であり、かつ短期間の投与では有害事象は稀であることが示唆されている。
方法:
川崎病に対する通常の初期治療への静脈内メチルプレドニゾロンの追加が冠状動脈病変のリスクを低下させるかを明らかにするため、多施設共同二重盲検ランダム化比較試験を行った。
発熱期間が10日以下の患者を対象に、
- メチルプレドニゾロン30 mg/kg (101人)静注群
- プラセボ(98人)投与群
のいずれかにランダムに割り付けた。
全ての患者は、 免疫グロブリン 2 g/kgおよびアスピリン 80から100 mg/kg/日を投与した。アスピリンは解熱後48時間から、5 mg/kg/日に減量した。
結果:
ランダム化を行い治療開始後の1週目および5週目に、 冠動脈径のz-scoreは、2つの治療グループではほぼ同等であった。
プラセボ群と比較して、メチルプレドニゾロン静脈内投与群は、
- 入院初期期間はやや短い
- 第1週の赤血球沈降速度は低い
- CRP値も低い
といった傾向があった (P=0.07) 。
しかし、両群の入院日数、発熱日数、免疫グロブリン静注による再治療率、有害事象の発生数は同程度であった。
結論:
これらのデータは、初期治療のための従来の治療法へのメチルプレドニゾロン・パルス療法の追加を支持していない
考察と感想
川崎病の急性期の治療の違いによる有効性の違いを検討しています。
こちらの国外の研究では、川崎病にステロイドを使用しても、検査上のデータは改善するけれども、そのほかの臨床的なアウトカムは良くならないという結果でした。
この後に、日本から有効性を示した研究が沢山出るわけですが、違いとしては患者の選別にあります。つまり、闇雲にステロイドを投与すれば良いわけではなく、ハイリスクの患者を選んで使用する必要があるのです。
まとめ
川崎病の急性期に標準治療にステロイドを追加したところ、炎症マーカーなど検査データは改善するものの、冠動脈病変のリスクや発熱期間などは改善しなかったようです。
この後、日本から複数の研究が発表され、ハイリスクの患者には有効性を認めています。疫学的に言うとこの現象は、治療効果の修飾(effect modification)でしょう。
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