科学的根拠

鼻洗いと鼻吸いは組み合わせた方がより効果的か? イタリア編

  •  鼻洗いは小児の風邪に有効かもしれない
  •  鼻吸いも小児の風邪の症状が短くなるかもしれない

といった点を解説してきました。ここで疑問になるのが、「この2つを組み合わせてみたらどうだろうか?」という点です。

2つの治療を組み合わせるとより治療効果が増すことがありますし、逆に減衰してしまうことがあります。
このため、実際に組み合わせを変えてみて評価する必要があります。

今回は、鼻洗いと鼻吸いの有効性を検討した研究を見つけましたので、こちらで解説させていただきます。

研究の方法

今回の研究は、イタリアで行われた観察研究で、

  •  2ヶ月〜2歳
  •  風邪症状
  •  慢性疾患なし

をメインの対象としています。

治療について

治療は

  •  鼻洗い+鼻吸引機
  •  鼻洗いのみ

のいずれかを患者が選んでいます(ランダム化ではありません)。

鼻洗いはNarhinel® Physiological Saline solution (生理食塩水)、鼻水はNarhinel® Aspirator (Novartis)を使用して吸ったようです。

アウトカムについて

アウトカムは、

  •  鼻水や中耳炎
  •  口呼吸
  •  睡眠やや食事といったQOL

を対象に評価しています。

研究結果と考察

最終的に435人が参加し、

  •  鼻吸い+鼻洗い:238人
  •  鼻洗いのみ:197人

でした。鼻洗いグループの方がやや年齢が高い傾向にありました(8.9ヶ月 vs 11.4ヶ月)。

中耳炎の頻度について

中耳炎の頻度は以下の通りでした:

鼻吸い あり なし
AOMなし 85.8% 82%
1回 6.5% 14.8%
2回 5.6% 2.1%
3回 2.2% 2.1%

鼻吸いをしたグループの方が、やや中耳炎を罹患しない確率は高い傾向にありました。

著者らの比較の仕方には少し問題がありそうな印象でした。

症状のスコアについて

鼻水、咳、発熱などの症状をスコア化して評価しています。結果は以下の通りでした:

鼻吸い あり なし
1日目 3.81 3.81
2日目 3.87 3.49
3日目 2.92 3.08
4日目 2.49 2.44
5日目 1.73 2.04
6日目 1.3 1.66
7日目 1.01 1.24
8日目 0.84 0.98

あまり両者に意味のありそうな差はなさそうですね。

睡眠の質について

睡眠の質については以下の通りでした(https://automeris.io/WebPlotDigitizer/を使用して図表から作成)。

鼻吸い あり なし
2日目 19.9 14.7
3日目 36.0 27.3
4日目 47.8 36.1
5日目 49.6 39.9
6日目 51.7 45.5
7日目 54.2 49.0
8日目 57.6 50.1

鼻吸いをしたグループの方が、改善を実感した方がやや多く、睡眠の質は良さそうな印象ですね。

風邪に再度罹患した時に、同じような結果が得られるのか、再現性の確認もしています。

鼻吸い あり なし
2日目 23.1 7.6
3日目 47.9 38.8
4日目 61.8 58.4
5日目 68.9 63.1
6日目 76.0 68.2
7日目 77.9 73.4
8日目 80.9 76.9

再発時も、鼻洗い+鼻吸いをしたグループの方が、睡眠の質の改善を実感した人の割合はやや高い傾向にありそうですね。

感想と考察

研究全体の傾向としては、鼻洗いと鼻吸いを組み合わせた方が、小児の中耳炎のリスクはやや減少し、睡眠の質を改善させる可能性がありそうな印象でした。
一方で、風邪の症状をトータルで見ると、あまり差はなさそうな印象ですね。

この研究の問題点としては、ランダム化が行われていないこと、交絡因子の対象がされていないこと、さらには盲検化が難しい事による情報バイアスといったところでしょうか。

鼻吸いをしたグループの方が月齢が低い傾向にあり、また月齢によって症状の持続期間や、中耳炎のリスク、睡眠の質は異なるでしょうから、ここは回帰分析などを利用して対処して欲しかったですね。本当に治療効果を見ているのか、年齢による違いによる効果を単に見ているのか、はっきりとはわからない印象です。

また、鼻吸いや鼻洗いは盲検化が難しいので、主観的な評価に影響を与えてバイアスを招くことがあります。具体的には、睡眠の質や症状のスコアなどの計測エラーが起こりうると思います。

まとめ

今回の研究では、鼻洗いに鼻水の吸引を組み合わせても、風邪の症状自体はあまり変わらない印象でした。一方で、睡眠の質や中耳炎の再発率には影響するかもしれません。

研究デザインと解析方法にやや難のある研究でしたので、類似の研究結果を見て総合的に判断する必要があると思います。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。