科学的根拠

小児の滲出性中耳炎と抗ヒスタミン薬について【メタ解析の結果】

今回は小児の滲出性中耳炎に抗ヒスタミン薬が有効であるか、メタ解析の結果がコクランデータベースに報告されているので、そちらをみてみましょう。

抗ヒスタミン薬 vs プラセボで比較した

  •  治療開始後1−3ヶ月以内の治癒率

抗ヒスタミン薬 + 充血除去薬 vs プラセボで比較した

  •  治療開始後1−3ヶ月以内の治癒率
  •  副作用の発症率

などを検討しています。

治療開始後1−3ヶ月以内の治癒率について

抗ヒスタミン薬(H)がプラセボ(偽薬:P)と比較して、1−3ヶ月以内の治癒率を見ています。

著者 H P
Choung 2008 21/32 18/34
Dusdieker 1985 13/22 14/24
Edstrom 1977 15/43 20/51

ぱっと見た感じはどちらのグループも同じように見えますが、メタ解析をしてみるとどうでしょうか。

治癒率の差(RD)を計測しても、0.02で95%信頼区間は0を大きく跨いでいます。
どうやら抗ヒスタミン薬単剤では、1−3ヶ月以内の治癒率を改善させなさそうという結果になりました。

次に、抗ヒスタミン薬+充血除去薬のコンビ(HD) vs プラセボ(P)で見てみましょう。

著者 H P
Houghes 1984 13/20 10/16
Lesser 1986 9/21 8/18
O’Shea 1980 29/40 27/43

リスク比(RR)でみると、抗ヒスタミン薬+充血除去薬のコンビの方が若干成績は良さそうですが、95%信頼区間は広く、統計学的な有意差はありません。

この結果だけですと、抗ヒスタミン薬+充血除去薬のコンビを強く推奨するのはやや困難と思います。

副作用の発症率について

治療開始後1ヶ月以内での副作用の発症率も見てみましょう。

著者 H P
Cantekin 1983 51/278 20/275
Cantekin 1991 23/158 11/160
Lesser 1986 1/13 0/12
O’Shea 1980 12/27 3/28
Saunte 1978 3/11 1/10

抗ヒスタミン薬による副作用のリスクは、プラセボと比較して2.54倍となっています。

どうやらこれまでの結果をまとめると、抗ヒスタミン薬は滲出性中耳炎に有効性はなさそうで、充血除去薬を追加しても有効性ははっきりせず、副作用のリスクの上昇は確実と言えそうです。

Dr.KID
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別の言葉でいうと、わずかな有益性しか期待できない治療と引き換えに、副作用のリスクは確実に上昇しています。合理性はやや乏しいようにも感じます。

これまで報告してきたチペジピン(アスベリン®︎)などと比べると、割と臨床試験が行われている方ですが、それでもやはり数としては少なく感じます。
例えば副作用の報告は5つほど集めることができていますが、有効性の方は3つほどしか研究がなくメタ解析としては不十分な印象です。

まとめ

今回のメタ解析の研究結果を読む限りでは、滲出性中耳炎に抗ヒスタミン薬を投与するメリットはなさそうな印象で、むしろ副作用のリスクが確実に上昇するため慎重になった方が良いと思いました。

ただし、メタ解析に組み込まれた研究数やサンプル数は必ずしも多くはなく、解釈は慎重にならざるを得ない結果です。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。