科学的根拠

小児に鼻吸引器を使用すると、かぜ症状が軽快するのか? ドイツ編

  •  クリニックなどに受診して、鼻水を吸ってもらうのは、意味がありますか?
  •  鼻汁の吸引は、風邪の重症化などに予防効果がありますか?

など、鼻汁吸引に関するエビデンスは、非常に興味深いテーマだと思います。

先日から、鼻洗いは小児の風邪の症状や、上気道感染症に予防効果があるかもしれない研究を解説してきました。

鼻洗いは小児のかぜ症状を緩和し、鼻かぜの予防効果があるかもしれない  子供の鼻水を止める薬は効かないのですか?  咳止めが効かないって本当ですか? 以前、こちらに関連した記事を複数記載して...

また、先日紹介した、小児の救急外来受診患者の診療方針を見ても、8割の医師が乳幼児に喘鳴があれば鼻水の吸引を行うと評価しており、意外と医師が鼻吸いを重要視しているのが伺えました。

細気管支炎はアメリカでどのように診療されているのか?急性細気管支炎は乳幼児に多い疾患でして、これが原因で入院するお子さんもたくさんいます。原因として多いのはRSウイルスやヒトメタニューモウ...

今回は、鼻水を吸うことが、本当に小児の風邪患者にとって有益なのかを検討した論文をご紹介します。

研究の方法

今回の研究は2016年にドイツで行われたランダム化比較試験で、対象となったのは、

  •  3〜72ヶ月
  •  β刺激薬が必要な喘鳴の既往がある
  •  慢性疾患がない

などを中心に被験者を決めているます。

介入について

ランダム化を行い、

  •  ネブライザー(吸入器)による吸引と鼻吸い
  •  ネブライザー(吸入器)による吸引のみ

のいずれかを行うように指導しています。

つまり、鼻吸い+吸入器 or 吸入器のみを保護者に渡し、それぞれホームケアの仕方を指導しています。

アウトカムについて

アウトカムは、

  •   風邪などの症状と期間
  •   β刺激薬の使用割合

などを比較しています。

研究結果と考察について

最終的に89人が研究に参加し、吸入器付のものは43人、そうでない製品は46人でした。

患者背景の特徴として、

  •  6割以上が男児
  •  年齢は30ヶ月ほど
  •  白人が7割

でした。

β刺激薬の使用割合

鼻の吸引をしたグループと、していないグループでβ刺激薬(サルブタモール)の使用割合を見ています。

鼻吸引 あり なし P
β刺激薬の使用 12.2% 16.9% < 0.001

鼻吸引をしたグループの方が、β刺激薬を使用する機会が減少しています。

この結果は少し注意した方が良いと思います。
吸引機能付きの機器を使用したグループは、最初に鼻を吸い、それでもダメならβ刺激薬を使用したと思われます。一方で、吸引機能のない機器を使用したグループは、他にできることがなくて、最初からβ刺激薬を使用した可能性があります。

このため、吸引が本当にβ刺激薬の使用が必要となるくらいの発作の頻度を下げたのかは、やや懐疑的です。

風邪の症状について

気道症状を点数化して評価しています。

鼻吸い あり なし P
上気道 25.0%
(14.5-43.6)
46.4%
(27.4-58.4)
0.004
下気道 21.8%
(14.5-37.3)
32.8%
(16.8-50.3)
0.022

鼻の吸引をした方が、症状が改善している印象を受けます。さらに、症状の期間を比較しますと、以下のようになります:

鼻吸い あり なし P
上気道 4.3日
(3.8〜4.9)
5.7日
(5.0〜6.4)
0.007
下気道 3.8日
(3.4〜4.2)
4.4日
(4.4〜6.0)
0.067

特に上気道の症状は、鼻吸いをしたグループの方が、期間が短く済んでいる印象ですね。

一方で、

  •  発熱
  •  喉の症状
  •  睡眠
  •  食欲

などにはあまり影響していない印象です。

考察と感想

少し用語の使い方が気になりました。

この研究は、randomized controlled trialであり、case-control studyではないので、この記載はいただけないと思いました。
Treated vs. controlや、Intervened vs. controlという比較をするなら良いのですが、Case(アウトカムを発症した人)ではないので不適切な記載です。

Tableの記載方法もわかりづらいと思いました。例えば、Table 4は文章を読むまで単位が%とは分からなかったです。

しっかりとサンプル数を集めて、研究デザインを整えているのですが、アウトカムのプレゼン方法だったり、専門用語の間違いがあったり、少しもったいないと思う箇所が多数ありました。

まとめ

今回のドイツの研究では、喘鳴の既往のある小児に鼻吸い器を使用したところ、β刺激薬の使用頻度は減り、風邪の症状の頻度や期間はやや短くなっている印象です。

やや論文の記載方法に難があり、解析方法にも疑問のある箇所があるため、この結果の妥当性については少し慎重な姿勢でいます。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。