スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、将来の学業やライフスタイルに悪影響する可能性があります。
今回は、その点を見た論文をご紹介します。
- アメリカで行なわれた研究
- テレビの視聴時間・内容と社会性のアウトカムの関連性を検討
- 不適切な番組の視聴は、攻撃性・衝動性・社会性など悪影響があるかも
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景・目的:
本研究の目的は、メディア視聴習慣(不適切と判断された番組の視聴量や有無)と教室における未就学児童の社会的転帰(多動性、攻撃性、社会的技能など)との関係を調べることであった。
方法:
アメリカで行われているコホート研究のデータを利用した調査である。
参加者は、低収入世帯の92人が対象となりました。
親の報告によるメディア視聴習慣と教師の報告による教室行動の関連性を検討した研究です。
結果:
不適切な内容の視聴が、より高い多動性と攻撃性スコアおよびより低い社会的スキル評価と関係していた。
一方で、視聴量はこれらの教室の結果と関係しないことを示唆した。
結論:
テレビの視聴量とコンテンツの両方が、子どもの中・後期の社会的発達にどのように影響するかについて、多くの注目が集まっています。
この研究は、幼児の親がメディア視聴を制限するためのガイドラインの開発に影響を与えます。
本研究からの知見は、学校職員や保護者が就学前児童が見ている内容を監視する必要があり、メディア視聴が子供の教室行動に与える潜在的影響について、保護者に伝えて教育すべきであることを示唆する。
考察と感想
不適切なコンテンツと行動などのアウトカムは以下の通りでした:
不適切な内容 | なし N = 40 |
あり N = 55 |
攻撃性, 平均(SE) |
1.49 (0.31) |
2.53 (0.26) |
過活動 | 0.87 (0.22) |
1.47 (0.19) |
社会性 | 18.50 (0.63) |
15.89 (0.53) |
確かに、不適切なコンテンツをみている小児のほうが、攻撃性・過活動のスコアが高く、社会性のスコアが低い傾向にあるようにみえます。
一方で、この論文を読んでも研究デザインがいまいちはっきりしなかったです。おそらく横断研究なのだとは思うのですが。このため、因果の方向性については、少し慎重に考えています。
質の高いコホート研究での結果が知りたいですね。
まとめ
今回の研究は、アメリカで行なわれた研究で、テレビの視聴時間やコンテンツと社会的な転帰の関連性をみています。
テレビの視聴時間は、攻撃性・多動・社会性の低下との関連は認められませんでしたが、不適切なコンテンツの視聴の有無は関連していました。
就学前の幼児にとって、どのような番組をみせるかは、重要といえます。
乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓
Dr. KIDが執筆した医学書:
小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/08 01:43:13時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について