- 便秘には野菜を
- 食生活を改善させましょう
と、便秘の治療の際に、医療者からアドバイスされることがあるかもしれません。あるいは、便秘に食物繊維が効く、というのは、すでにご存知の保護者の方々も多いかもしれません。
今回は、小児の便秘において、小麦ブランを摂取させることで食物繊維の摂取量を増加させ、便秘が改善するかを検討した研究をご紹介します。
- 研究の最初に食物繊維の摂取量を確認
- 小麦ブランを用いて介入
- 便秘は改善する傾向にあった
ブラジルからの報告です。
小麦ブランの摂取は小児の慢性便秘症に有効か?
研究の背景/目的
本研究の目的は, 食物繊維を多く含むwhea bran (ブラン)を勧められた便秘症の小児において、食物繊維 (DF) 摂取量と排便習慣 (BH) を24か月にわたって評価することであった。
研究の方法
「ボストン基準」により定義された機能性便秘の小児28人の排便の頻度および食事データを,初診1 (V 1、n=28)および4回の追跡受診(V 2-V 5、n=80)で得た。
各来院時に, 排便習慣を悪化(悪化している;改善されたが依然として合併症)または回復 (REC) (改善,合併症なし;無症候の)と評価し,食物摂取質問票を適用した。
食物繊維の摂取量は[年齢 (年) +5から10] g/日に従って算出し、ブランの摂取量は国際的な表に従って算出した。ノンパラメトリック統計を用いた。
研究の結果
年齢中央値 (範囲) は7.25歳(範囲、0.25~15.6)であった。
21人の子供は腸ウォッシュアウト(宿便の解除)を受け(V 1/V 2の前), 14人はV 3/V 4で最終来院した。
食物繊維摂取量, ブラン摂取量および排便習慣は, 2回目の受診(V 2)で統計学的に有意に増加し, V1 より、V 2~V 5で高いままであった。
初回受診(V 1)では, 食物繊維の摂取量の中央値は最小推奨量より29.9%低く,最終来院時は49.9%高かった。
24名の小児において、60回受診のうちにブランを受け入れた。
ブラン摂取量の中央値は20 g/日で,ブランによる食物繊維摂取量の割合の中央値は26.9%であった。
排便習慣を悪い(BAD)を示した人より, 回復(REC)を示した小児の方が、2〜5回目の受診(V 2~V 5)において、統計学的に有意に高い食物繊維(DF)およびブランの摂取量は高買った。
[食物繊維の摂取 > 年齢+10] g/日は,ブランの受容および回復(REC)と関係した。最終来院時, 21人の子供は回復(REC)を示した (75%);そのうち20人は無症状であり, 18人はウォッシュアウト/緩下剤から離脱できた。
結論
高食物繊維およびブランの摂取は便秘の小児において実行可能であり,便秘の改善に寄与する。
考察と感想
本文中のTable 1のデータが、この研究の趣旨を一番よく捉えていると思いました:
受診 | 初回 | 最終 |
N | 28 | 28 |
食物繊維摂取 (% of age + 5) |
-30% | +50% |
[IQR] | [-65 to 38] | [13 to 140] |
食物繊維摂取 | ||
< 年齢+5g/日 | 17 (61%) | 5 (18%) |
年齢+5〜10g/日 | 6 (21%) | 6 (21%) |
> 年齢+10g/日 | 5 (18%) | 17 (61%) |
ブランの摂取, g/日 (IQR) |
0 (0-0) |
8 (0-20) |
排便習慣軽快 | 9 (32%) |
21 (75%) |
宿便の解除 | 12 (43%) |
4 (14%) |
小麦ブランを食生活に取り入れる前(初回受診)と比較して、食物繊維の摂取量や排便習慣が改善しているのが分かります。
まとめ
今回は、ブラジルから報告されたシングルアームの介入試験です。
慢性便秘症のある小児を対象に、小麦ブランを介した食物繊維の摂取を推奨したところ、食物繊維の摂取量が増え、便秘が改善する傾向にあったようです。
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