科学的根拠

エキナセアはスウェーデンの市販薬(Kan Jang)より風邪に有効か?

エキナセアは、かぜ症状(急性上気道感染症の症状)をはじめとする、様々な状態において、治療薬としてよく使用されているようです。

成人では、「かぜ症状の改善にエキナセアが有効かもしれない」というRCTがあるようですが、小児においては研究数は少ないです。

また、スカンジナビア半島では古くからKan Jangという市販薬を使用していたようですが、小児での有効性の評価はなく、今回、まとめて行われたようです。

created by Rinker
DHC(ディー・エイチ・シー)
¥790
(2024/04/26 22:48:20時点 Amazon調べ-詳細)

(推奨ではありません)

 

マミー
マミー
エキナセアが風邪の予防に効くって本当ですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
小児で行われた研究があったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

 

ポイント

  • 4歳〜10歳の小児において、Kan Jang, エキナセア(Echinacea purpurea)、標準治療を比較したランダム化比較試験です。

  • エキナセアに関しては、標準治療と比較して有益性はほとんど示されず

  • Kan Jangは風邪症状が軽く、期間が短くなる可能性が示唆されていました。

参考文献

Spasov AA, Ostrovskij OV, Chernikov MV, Wikman G. Comparative controlled study of Andrographis paniculata fixed combination, Kan Jang and an Echinacea preparation as adjuvant, in the treatment of uncomplicated respiratory disease in children. Phytother Res. 2004 Jan;18(1):47-53.

   日本では一般的に使用されてる薬ではないので、注意しましょう

エキナセア/ビタミンC/プロポリスは子供のかぜ予防に有効で安全?

研究の背景/目的

合併症のない小児の感冒において、Kan Jang (Andrographis paniculata (N.) SHA‐10抽出物を含有する固定化された薬草の組み合わせ)とImmunal (Echinacea purpurea (L.) 抽出物を含有する製剤)の有効性を検討した。

Kan Jangはスカンジナビア(主にスウェーデン)で利用されている、風邪の民間療法のようです:


(参照)

Immunalは、エキナセアの抽出物を含む市販薬のようですね:


(参照)

研究の方法

4歳から11歳の小児130人で、10日間にわたって実施した。

治療

​本研究は

  • Kan Jang : N = 53
  • Immunal (エキナセア): N = 41
  • 標準治療 : N = 39

の3グループで行われた、ランダム化比較試験である。

 

アウトカム

主なアウトカムは、

  • 風邪のエピソード
  • 発熱日数
  • 疾患の日数

などであった。

Dr.KID
Dr.KID
小児のかぜに、エキナセアなどを含む製剤 or プラセボを投与して、経過を比較したのですね。

研究の結果

合併症のない感冒の早期に開始した場合, Kan Jangの方が

  •  症状が軽度
  •  鼻汁と鼻閉が軽度
  •  回復までの時間が短い
  •  解熱薬や鎮咳薬の使用頻度が少ない

傾向にあった。

結論

Kan Jang治療の忍容性は良好であり, 副作用は報告されなかった。

考察と感想

Abstractにはデータが提示されていないので、実際にどのくらい効果があったのか分かりづらいですね。

例えば、患者スコアというのも計測しているのですが、何を指標にされていたのか、本文を読んでもよくわからなかったのですが、以下のような中央値の推移だったようです:

経過 KJ E C
1日 4 4 5
3日 1
(1-2.25)
4
(2-5)
4
(3-4.75)
5日 0
(0-1)
2
(1-3)
3
(2-4)

(KJ, Kan Jang; E, エキナセア; C, コントロール)

エキナセアとコントロールを比べてみても、ほとんど変わらない印象ですね。

他の指標(鼻水の量)も同じような推移をしていました。

まとめ

 4歳〜10歳の小児において、Kan Jang, エキナセア(Echinacea purpurea)、標準治療を比較したランダム化比較試験です。

エキナセアに関しては、標準治療と比較して有益性はほとんど示されず、Kan Jangは風邪症状が軽く、期間が短くなる可能性が示唆されていました。

Kan Jangは日本では一般的な薬でないため、注意は必要であると思います。

 

小児で使用される咳止めのエビデンスをまとめたnoteもあります。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/26 20:15:38時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。