科学的根拠

抗ヒスタミン薬と充血除去剤は滲出性中耳炎に無力?【科学的根拠】

こどもが風邪をひいた際に中耳炎に罹患してしまうことがあります。
かくいう私も、幼少時にかぜと一緒に急性中耳炎になり、近所の耳鼻科に母親に連れて行ってもらった記憶があります。

中耳炎といってもいくつか種類がありますが、急性中耳炎と滲出性中耳炎があります。
鼻と耳は耳管という管(くだ)でつながっています。
急性中耳炎では中耳に病原体が入り込み、炎症を起こし、膿が溜まった状態をいいます。「かぜをひいたと思ったら、耳を痛がっている」と受診される方は急性中耳炎を起こしていることが多いです。

一方、滲出性中耳炎は中耳に液体が溜まった状態です。
急性中耳炎の回復過程で起こったり、かぜなどを契機に起こしてしまうことがあります。無症状のことも多いですが、難聴、耳閉感、耳鳴および自分の声が耳に響くなどの症状を認めることもあります。

小児科医が語る滲出性中耳炎のまとめ滲出性中耳炎のポイント まずは、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎のポイントです; 滲出性中耳炎は『耳の中に水が溜まっている状態』...

滲出性中耳炎は鼻水を契機におこしやすいので、鼻水を薬で抑えてしまえば軽快すると考えられていました。
現に、1980年代のアメリカでは90%ほどの耳鼻科医が抗ヒスタミン薬と充血除去剤を小児に処方していました。

しかし、抗ヒスタミン薬と充血除去剤の有効性は検討されておらず、今回の研究が行われたようです。

参考文献

Cantekin EI, et al. Lack of efficacy of a decongestant-antihistamine combination for otitis media with effusion (“secretory” otitis media) in children. Results of a double-blind, randomized trial. N Engl J Med. 1983;308:297-301.

Dr.KID
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少し古い論文ですが、1980年前後に抗ヒスタミン薬の有効性を検討した研究は複数あります。

研究の方法

今回の研究は、アメリカのピッツバーグ小児病院で1978〜1981年に行われたものです。研究の対象となったのは、

  •  生後7ヶ月〜12歳
  •  滲出性中耳炎が診断された
  •  先天性の頭蓋顔面奇形がない(ダウン症など)
  •  全身性の疾患がない(喘息など)
  •  耳鼻科系の手術・処置をうけていない

などを対象にしています。

年齢、滲出性中耳炎の期間、抗菌薬の投与の有無で24のグループに分けています。

年齢 期間 抗菌薬
7-23ヶ月 〜3週 あり
2-5歳 4〜8週 なし
6-12歳 8週〜  
  不明  

治療については、

  •  クロルフェニラミンとpseudo-ephedorine
  •  プラセボ(偽薬)

の2つのグループにランダム分けています。

Dr.KID
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「pseudoephedorine」はプソイドエフェドリンとカタカナで書かれていますが、英語ではシュードエフェドリンと発音するので違和感ありすぎなので、英語のままにしています。悪しからず。

アウトカムの評価

薬を投与して4週間後に

  •  中耳の浸出液の状態
  •  副作用

をメインに評価をしています。

研究結果と考察

600人が研究対象となり、実際には553人が研究に参加し4週間後のアウトカムが評価されました。
研究開始時点で、

  •  両側性の滲出性中耳炎:393人
  •  片側性の滲出性中耳炎:160人

でした。

4週間後の中耳の状態

こちらが4週間後の研究結果になりますが、わかりづらいと思うので少し表を作り直して解説していきます。

Dr.KID
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原著もかなりわかりづらく書かれています。

滲出性中耳炎がもともと片側性だった人を対象に治療効果を推定すると、以下のようになります。

  治療 プラセボ 治療効果
完治 27
(33.8%)
30
(37.5%)
0.9
(0.59, 1.37)
合計 80 80 P = 0.62

抗ヒスタミン+Pseudo-ephedorineを使用したグループのほうが、完治する人の割合が低い傾向にありますが、統計学的な有意差はありません。

Dr.KID
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片側性の滲出性中耳炎の人に投薬をしても、あまりメリットがなさそうな印象です。

次に、滲出性中耳炎がもともと両側性だった人を対象に治療効果を推定すると、以下のようになります。

  治療 プラセボ 治療効果
完治 41
(20.7%)
36
(18.5%)
1.24
(0.86, 1.81)
合計 118 129 P = 0.25

抗ヒスタミン+Pseudo-ephedorineを使用したグループのほうが、完治する人の割合がやや高い傾向にありますが、統計学的な有意差はありません。

Dr.KID
Dr.KID
両側性の滲出性中耳炎の人には投薬すると改善させる可能性はありえますが、はっきりとしない結果です。薬を使ったほうがいいとは言い切れない結果です。

滲出性中耳炎の再発について

4週間後の評価で94人が滲出性中耳炎が完治していましたが、このうち94人をさらに4週間ほど追跡して、再発していないか確認しています。

  治療 プラセボ リスク比
再発 20
(43%)
12
(26%)
1.67
(0.92, 3.01)
合計 47 47 P = 0.13

滲出性中耳炎の再発率は、投薬をうけた人のほうが1.67倍高かったですが、統計学的な有意差には達していません。

Dr.KID
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投薬すると再発しやすくなる可能性はありえますが、これもはっきりとしない結果です。薬を使わないほうが良いかもしれませんが、この研究だけでは言い切れない結果です。

副作用について

薬の副作用については2週間後と4週間後に評価されています。

抗ヒスタミン薬ですと、鎮静など神経系の副作用が気になるところです。
副作用あり/なしでテーブルを作り直すと以下のようになります。

  治療 プラセボ リスク比
2週間後 59 21 2.78
(1.74, 4.44)
4週間後 10 6 1.65
(0.61, 4.47)
  278 275  

治療開始後2週間後に副作用を認めるリスクは、抗ヒスタミン+pseudo-ephedrineグループは2.78倍で、統計学的な有意差があります。

治療4週間後でも治療をうけたグループのほうが副作用を報告するリスクが高かったですが、統計学的な有意差はありません。

Dr.KID
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第一世代の抗ヒスタミン薬ですので、やはり副作用が強くでていますね。

まとめ

今回の研究では、生後7ヶ月〜12歳の小児の滲出性中耳炎に抗ヒスタミン薬とpseudo-ephedrineを合剤として使用しても、有効性ははっきりせず、ひょっとしたら投薬終了後の再発リスクが高くなるかもしれない結果でした。

また副作用を高率で認めており、やはり第一世代の抗ヒスタミン薬は注意が必要といえます。

Dr.KID
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第一世代の抗ヒスタミン薬は、滲出性中耳炎の治療薬としてのメリットは少なく、副作用というデメリットが多いという結果ですね。

ABOUT ME
Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。