抗菌薬

抗菌薬の使用率を減らしても、細菌感染症の合併率は増加しない?[スウェーデン編]

今回は、スウェーデンにおいて抗菌薬の使用率の減少と細菌感染症の推移を検討した研究です。

ポイント

  •  スウェーデンでは、長年かけて抗菌薬の使用率は減少傾向に成功
  •  多くの場合、細菌感染症の合併率は増加していない
マミー
マミー
抗菌薬の適正使用をしていっても、弊害はないのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   抗菌薬の適正使用の研究は、北欧やオランダなどが頑張っている印象です。

 研究の概要

背景・目的

抗菌薬の使用が上気道感染 (URTI) 後の細菌性合併症と関係するかを検討する。

方法

前向きコホートを使用した、生態学的時間傾向分析の研究。

スウェーデンのストックホルム郡において、一次外来及び入院治療全てのデータを使用した。
 2006年1月~2016年1月の診察、診断および抗菌薬に関する行政医療データに基づいた。

主なアウトカムは、URTI, 細菌感染/合併症および上気道感染に対する抗菌薬使用率の10年間の傾向を分析した。

前向きコホートでは、抗生物質曝露および非曝露患者におけるURTI後の細菌性合併症の頻度を推定した。

Dr.KID
Dr.KID
time-series analysisとprospective cohortを一緒に行ったようですね。

結果

呼吸器感染症に対する抗生物質の使用は2006年から2015年までに22%減少した。

一方で、乳様突起炎 (p=0.0933) 、扁桃周囲膿瘍 (p=0.0544) 、侵襲性A群連鎖球菌感染症 (p=0.3991) 、眼窩膿瘍 (p=0.9637) 、硬膜外および硬膜下膿瘍 (p=0.4790) および副鼻腔炎 (p=0.3971) の増加傾向は認められなかった。

髄膜炎と篩骨洞の副鼻腔炎では、感染数の2006から2015への減少が観察され(それぞれp=0.0038およびp=0.0003)、咽後膿瘍と副咽頭膿瘍では、増加が観察された (p=0.0214) 。

Dr.KID
Dr.KID
ちょっとP値を並べて強調しすぎと思いました…。effect estimatesを出して欲しいですね。

抗菌薬使用の有無で場合分けしたURTI後の細菌性合併症は以下の通りであった。

抗菌薬 あり なし
扁桃炎 41.1
/10000
32.4
/10000
扁桃周囲膿瘍 1.5
/10000
1.3
/10000

 

結論

URTI後の細菌性合併症は稀であり、抗生物質は細菌合併症の予防効果を欠く可能性がある。

日常的な診療から収集された大規模なデータの分析は、患者、処方者および政策決定者にURTI数、抗生物質使用および細菌性合併症に関する貴重な情報を提供できる。

考察と感想

抗菌薬の適正使用を進めていく上で障壁となるのが細菌感染症、特に重篤なものの増加です。

この研究によると、適正使用を進めて抗菌薬の処方率が減っても、一部の感染を除いてほとんど影響していないですね。

Dr.KID
Dr.KID
外来で診療されている医師は、リスク回避的に処方されることもあるようですしね。「Just in case」と著者らは表現していましたね。


(論文より拝借)

抗菌薬の使用率は減っていますよというデータです。


(原著より拝借)

細菌感染症の発生率はほとんど横ばいのデータですね。

スウェーデンでは、抗菌薬の使用状況のサーベイランス、ガイドラインの導入、医療者と一般市民への教育的な活動を、長い期間かけて行っているようで、その成果の1つがこの研究なのでしょう。

まとめ

今回は、スウェーデンにおいて、約10年間の抗菌薬の使用率と細菌感染症の合併率を見ています。

抗菌薬の使用率が減少しても、ほとんどの細菌感染症は増加傾向にはないようです。

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。